マネー研究所

眠れぬ人の法律クリニック

自作小説のトリック、TVに先越された 賞に出せる? 弁護士 志賀剛一

2018/11/22

長くて難しい表現ですが、肝心な箇所は「表現上の本質的な特徴の同一性を直接感得すること」ができるようなものかどうかという基準の設定です。「感得」という難しい言葉が使われており、辞書で引いてみると「奥深い道徳や真理などを感じ悟ること」などの意味が記載されています。

翻案の解釈に用いることについて必ずしも適切ではないような気はしますが、要するに既存の著作物と新著作物を比較した人が本質的な部分で「ああ、これは似ている」と直感するという意味であろうと解釈しています。けっこう主観的な判断ですね。

他方、重要なのは新たな著作物が思想、感情、アイデア、事件など表現それ自体でない部分で既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、翻案には当たらないと判断していることです。

■翻案権の侵害、極めて困難な判断

前述したようにトリック(アイデア)が似ているとか、あるいは実際に起こった事件を両著作物とも採り上げているといった共通点だけでは翻案には当たらないといえます。前述した日米の刑事ドラマの件と、ストーリー展開まで共通しているミス・サイゴンと蝶々夫人の違いということになりましょう。

とはいえ、同一性を直接感得できるかどうか、表現それ自体でない部分かどうか、実際の事案において翻案権の侵害の有無は極めて難しい判断になります。

最近、低予算で制作されたある映画が大ヒットし、話題を集めましたが、後になってこの映画は別の舞台作品の脚本が「原作」ではないかが争いになっているようです(私はいずれも見ておりませんのでなんとも言えませんが)。報道されている範囲では、映画のほうの監督もこの舞台作品を見たことを認めており、そうなると単なるアイデアを参考にしただけか、あるいは翻案に当たるのかが今後、争点になっていくものと予想されます。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。

マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL