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自作小説のトリック、TVに先越された 賞に出せる? 弁護士 志賀剛一

2018/11/22

写真はイメージ=PIXTA
Case:45 趣味でミステリー小説を書いており、様々な小説賞に応募しています。いまだに一次選考を通過したことはありませんが、いまも新しい作品を執筆中です。ところが先日、テレビで刑事ドラマを見ていたら、いま私が書いているものとまったく同じトリックが使われていました。そして、テレビを見ながら書き直しているうちに全体のストーリーもなんとなく似てきてしまったのです。もはや私はこのトリックを用いたミステリーは発表できなくなってしまうのでしょうか。

■トリック、具体的な「表現」とは解されず

先日、筆者が見ていたある日本の刑事ドラマは、警察が建物を取り壊して地面を掘り起こしていったん遺体がないことを確認したが、その後、犯人が別の場所に隠した遺体を埋めに来るところに刑事が現れるというストーリーでした。

私はこれを見ながら、小学生のころに放映されていた米国の刑事ドラマで見たものとまったく同じトリックであることに気づきました。「費用をかけていったん掘り起こしたのに、遺体が発見されなかった場所を警察が再び掘るはずがない」という犯人の心理を警察が見破るという内容で、小学生の私には衝撃的であり、よく覚えていたのです。このトリックは前述の日本の刑事ドラマもほぼ一致していたのです。

では、日本の刑事ドラマは著作権侵害でしょうか? 私はそうならないと思います。なぜなら、2つのドラマはトリックの部分が似ているだけで、ストーリーや結末はまったく異なっていたからです。

そもそも著作権法で保護される著作物は「思想または感情を創作的に表現した」「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されています。トリックはアイデアに属し、具体的な「表現」とは解されないのです。

■自由な創作活動、阻害も

考えてみてください。ミステリー小説は無数にありますが、トリックはだいたい限られていませんか? 密室やアリバイのトリック、自殺に見せかけた他殺(その逆もあり)など、同じようなものがたくさんあります。これらをすべて著作権侵害にしてしまうと、自由な創作活動が阻害されてしまいます。

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