紙巻き撤退、日本が試金石 フィリップ・モリスの本気加熱式で新製品、投資を集中

さらに同社は健康リスク低減の立証にも力を入れる。10月に加熱式たばこによる空気環境調査の研究結果を発表。今月には加熱式の喫煙で体内に取り込まれる物質量の研究結果も公表した。いずれも紙巻きと比べて悪影響は少ないと結論づけており、今後は人への健康影響についても研究を進める。

各社の加熱式を巡る動きは盛り上がりを見せる一方、健康影響に対する評価はまだ定まらず規制の大幅緩和などにつながる気配はまだない。

日本では20年の東京五輪までに、屋内は原則禁煙となる。国の法律、東京都の条例ともに、紙巻きだけでなく加熱式も規制対象としている。飲食店の専用室では紙巻きが喫煙しながら飲食できないのに対し、加熱式は飲食できるという違いはあるものの、現在より規制が強まることに変わりはない。

英調査会社のユーロモニターによると、17年の国内たばこの市場規模は前年比1.5%減の約351億ドル(約4兆円)。22年には約3割減の約248億ドルにまで落ち込む見込みだ。一方で加熱式は17年に加熱式たばこで各社の競争が本格化したこともあり、市場規模が約53億ドルと前年比で約2.8倍に拡大。22年にはさらに2割増える見通し。

ただここにきて市場には変調の兆しもある。PMIはアイコスの新規利用者が伸び悩んでおり、JTは18年度の販売目標を40億本から28億本に下方修正した。18年末の国内たばこ市場に占める加熱式の割合見込みも当初の約23%から約21%に引き下げた。

急速な普及で市場が一気に伸びた加熱式だが、機器購入の需要が一段落した可能性もある。各社は機能性やデザインを刷新した新製品をアピールし市場活性化を狙うが、喫煙者の大幅増は今後は見込めない。

縮小する国内たばこ市場で加熱式がさらなる成長を続けるにはPMIの長期戦略に限らず、健康リスクとの関係をどう位置づけるかが重要になる。メーカーの一方的な主張ではなく、社会全体で議論を深める空気を醸成できるかがカギとなりそうだ。

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「健康リスク低減」立証に注力

アンドレ・カランザポラスCEO
PMIのカサンザポラスCEO

――加熱式たばこの新規利用者の獲得は伸び悩んでいます。

「日本はアイコスの最大市場だが、想定したよりも成長は鈍い。ただ背景にあるのは競合製品の参入で、市場全体は伸びている。まずは多くの人に加熱式たばこを利用してもらうことが重要だ。健全な競争市場ならば最良の製品が常に勝つ。新型アイコスでより多くの利用者を獲得したい」

――将来的に紙巻きたばこから撤退する方針を表明しています。日本市場での展望は。

「時期は見通せない。メーカーの努力だけでは全ての喫煙者に次世代たばこへのシフトを促すには限界がある。ただ日本での商業的な投資についてはすでに紙巻きたばこからアイコスへ切り替えており、今後も投資を増やす」

「利用者数の多い日本では今後、健康リスク低減効果を検証する研究にも力を入れる。外部の研究機関を利用し、客観的で公平な研究をしていく。製薬会社が新薬の効果やリスクを検証するのと同じ手法だ。それぞれの疾病に対してリスクが低減ができるかを明らかにしたい」

――国内外で次世代たばこを含めた規制が強化されています。

「健康リスクを低減した次世代たばこと紙巻きたばこの規制は区別すべきだ。メーカーの研究や主張に限界があるのなら、政府が積極的に健康リスクの研究に加わって客観的な検証をしてもいい。誰もが次世代たばこの利点を理解し切り替えを促せるようにしていきたい」

アンドレ・カランザポラス
スイス連邦工科大学で電子工学の学位を取得後、フランスのビジネススクール「INSEAD」で経営学修士号を取得。1985年、PMI入社。東ヨーロッパ地域の社長など中欧での職務を歴任。13年5月から現職

(柏木凌真)

[日経産業新聞2018年11月16日付を再構成]

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