ライブエンタテインメントが興隆、そのブームをけん引する「2.5次元ミュージカル」の“金字塔”ともいわれるミュージカル『テニスの王子様』(通称:テニミュ)が、今年で上演15周年を迎えた。2.5次元ミュージカルとは、2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とす3次元の舞台コンテンツの総称。その先駆けとなった『テニミュ』が、15年の長きにわたり愛され続ける理由を探った。

『テニミュ』のストーリーはこうだ。アメリカ帰りのテニスの天才少年・越前リョーマが、テニスの名門校・青春学園中等部(青学:せいがく)に入学。1年生ながらレギュラーとなったリョーマを中心に、青学は全国制覇を目指し、地区予選、都大会へと出場し、「氷帝」「四天宝寺」、そして「立海」など様々な強敵に挑んでいく。

初演は2003年4月。1999年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていた人気同名マンガの舞台化だが、男性キャストのみで、歌ありダンスありのミュージカル仕立てにした例はあまりなく、「賛否両論の声もあった」とは、初演からキャスティングを任されてきたネルケプランニングの野上祥子代表取締役社長。「ですが、原作の人気が高く、2001年に弊社が声優のキャスティングをしたテレビアニメも好評。魅力的な男の子たちが青春を軸にラケットを振り、歌って踊る様を舞台化することで、演劇から遠かった若い層に受け入れてもらえるのではと考えました」(野上氏、以下同)。
とは言え、決して勝算があったわけではない。初日は空席が目立っていたのは有名な話。同時に、その後の怒涛の展開は、今や伝説となっている。

「初日、第1幕が終わった直後に、女の子たちが慌てて席を立って『すごくいいよ!』と電話している姿があちこちで見られて。すると次の日から当日券に列ができ、席は埋まり、最終日には大勢のお客様が列を作っていました。あの頃はまだSNSが一般的ではなかった時代。いち早く魅力に気づいたお客様の口コミだけであそこまで広がったのは、素晴らしく稀有なことだったと思います」
卒業システムで人気を継続
この『テニミュ』を「1、2回で終わるコンテンツじゃなく、何年も続くプロジェクトに」との思いで始めたプロデューサー陣が決めたのが、“キャストの卒業システム”だ。当時やはり画期的だったこの取り組みは、観客に受け入れてもらうのに時間がかかったそう。
「『こんなに大好きなキャストを変えないでほしい!』と。その気持ちは私もとてもよく分かります。
でもやはりキャストも含めダンススタイルや演出など、どんどん新しいことに挑戦していかないと、次はないんです。俳優側もとても人気のあった前任者の後を引き継ぐという重みやプレッシャーを乗り越えることで、自信と実力を付けていけたのだと思っています」