働き方・学び方

キャリアの壁をどう破るか

インフルエンサーの頂点へ 感性は現場で磨かれる WEF名誉会長・尾原蓉子氏×ビームス社長・設楽洋氏

2018/11/21

尾原 米国の学生のライフスタイルから入って、その後はアートの世界などへと立体的に展開。感性的にも質的にもレベルを高めておられますが、当初のコンセプトはずっと変わっていませんね。普通はトレンドを追いかけたほうが面白いし、利幅も大きいので、コアの価値観を忘れて売れるものに特化しがちです。ブレない軸があったのでしょうか。

■感性をデータで検証し、データを感性で疑う――不確実性の壁

尾原蓉子
一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション創設者・名誉会長。1962年東大卒、旭化成工業(現旭化成)入社。米ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)に留学したほか、米ハーバード・ビジネス・スクールの経営者向けコース(AMP)も修了。財団法人ファッション産業人材育成機構が運営するIFIビジネススクールの学長など歴任。近著に「Fashion Business 創造する未来」(繊研新聞社)、これと2部作となる「Break Down the Wall 環境、組織、年齢の壁を破る」(日本経済新聞出版社)。

設楽 我々の規模になると、ある程度はマスを追わないといけないのですが、売れなくても通の人にはわかるものも置いて、ビームスの良さを出そうとしてきました。自分たちが本来やりたいことは何かを忘れてはならないと思っています。

一歩先、半歩先に新しいものをつくるには、常に種まきが必要です。流行に敏感なお客様が手に取ったけれど、今はまだ棚に戻した。それが次のシーズンに爆発的に売れ始める、ということもあるので、そういうPOSデータに表れない店頭情報を大切にしています。データ分析では売れないという結果でも、楽しそうな方向を選ぶ場合もありますね。私はどちらかというと、自分の感性をデータで検証し、データを感性で疑うタイプの経営者だと思っています。

尾原 「次はこれだ」というものは、どのように見つけるのですか。

設楽 いろいろな所に顔を出し、同業以外の業界の人たちと会って、自分の知らない世界の流行や常識の違いに気をつけています。たとえば、音楽業界とIT(情報技術)業界ではそれぞれはやっているものがまるで違いますから。それから、そういう流行がどこから生まれ、どう消えていくかも、いつも考えるようにしていますね。

尾原 そういえば、日本ではまだ誰も注目していなかった時期に、設楽さんがいち早く「インフルエンサー」が気になるとおっしゃっていたのが、とても印象に残っています。新たなテーマ「オムニチャネル」のセミナーを構想し、設楽さんに聞いてみたとき「僕はインフルエンサーについて勉強したい」と言われたのです。インフルエンサーはオムニチャネルの次に、と思っていたのでドキッとしました。

設楽 ビームスはセレクトショップですが、これは基本的に、店のオーナーが自分のフィルターでキュレーションして好きなモノを集め、「この指とまれ」と示し、ファンを引き寄せるスタイルのビジネスです。インフルエンサーもまさに同じで、情報発信源となって人を引き付けますよね。インフルエンサーが自分で好きな商品を仕入れてネットで売り始める動きが広がり、それが10万人、100万人と増えていけば、我々の最大の強敵になると思ったのです。ビームスがインフルエンサーの頂点に立たないと、絶対に生き残れない時代になると考えています。

――そのために必要なスキルや感性をビームス社員が磨くために、どのような教育をしていますか。

設楽 現場のスタッフも含めて、極力、いろいろな研修や海外などに出すようにしています。おそらく、年間で延べ500~600人が海外に行っています。今は情報がすべてSNSで仕入れられるけれども、やはり現場で見た、肌で感じるものは違います。

私が今、一番怖いと思っているのが、「フィルターバブル」です。自分の趣味趣向のものをネットで買うと、それに関連したものが次々と表示され、自分の興味のないもの、フィルター外のものを見る機会が減っていく。それで、目の前にあるものだけが社会だと思ってしまうのです。世の中にはもっと多様な価値観があることを、若い頃から知ってほしいですね。

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