雇用延長で70歳も働く時代に 年金年齢の議論に先行年金問題をマネーハック(3)

しかし、公的年金の受給開始年齢を70歳に引き上げる議論はニュースになっていません。社会保障審議会年金部会でも公的年金の受給開始年齢引き上げのスケジュールは議題になっていないようです。もし、法律を改正し、経過措置を考慮しつつ施行すれば10年以上先に実施されることになるでしょう。引き上げが急務であれば遅すぎます。

これはどういうことなのでしょう? 決して政府がのんびりしてわけではないと思います。実は、日本で今起きているのは「年金を受け取り始める年齢」の引き上げ議論を「働ける年齢」の引き上げ議論が初めて逆転し、上回りつつあるということだと考えられます。

これまでの「年金が払えないから支給開始年齢を上げる」という発想ではありません。「健康で働ける人々がより長く働くことのできる社会の実現」を目指す中で、それが年金受給開始年齢を上回ろうとしているのです。

そして、これはおそらく世界的に見ても先駆的な取り組みであり、超高齢化に対して社会と個人が取り得る最も有効な選択肢になると考えられます。

「働かされる」という発想を早く卒業

本連載では何度も指摘していることですが、100歳人生時代において老後の豊かさを確保するすべは「退職金・企業年金による収入」「自助努力による資産形成(個人型確定拠出年金=iDeCo=などの活用)」と「高齢期の賃金収入」の3本柱です。

特に65歳以降も働けることは、老後資金のための貯蓄期間を増やし、取り崩し年数を短くするという二重の効果が生まれます。仮に22歳就職、65歳引退、100歳没という年表を描けば、現役時代43年、リタイア期間35年となりますが、引退年齢を70歳に置くと現役時代48年、リタイア期間30年となります。

簡単にいえば、現役時代が10%くらい増えて、毎年の老後資金積み立てのノルマは軽くなります。一方、リタイア期間が10%くらい短くなるわけですから、必要な老後資金も10%減る理屈になります。

二重の意味で老後の準備に余裕が生まれることになるのです(しかも、公的年金の受給を遅らせれば、年金を増額させることもできるし、厚生年金保険料を納めて働き続ければ年金額もアップする好循環が生まれる)。

世の中では今でも、「70歳まで働かされるのか……」という悲鳴のような論調が強いのですが、若い人ほど早く発想を切り替えたほうがいいでしょう。むしろ、長く働くほど老後はぐっと楽しいものとなるのです。

皆さんは雇用の年齢が年金受給開始の年齢を追い抜く時代の訪れを当事者として見届けてほしいと思います。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはIT(情報技術)スキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「共働き夫婦 お金の教科書」(プレジデント社)など。http://financialwisdom.jp
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