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馬を自在に操る メキシコの伝統馬術競技チャレアーダ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/11/25

ナショナルジオグラフィック日本版

メキシコの馬術競技「チャレアーダ」の映像を紹介しよう。チャレアーダは、メキシコ版のロデオと呼ばれることも多いが、ロデオより長い歴史がある。

チャレアーダの歴史は17世紀初めまで遡る。メキシコがスペインの植民地だったころ、大農園のオーナーたちは馬術大会を行っていた。農園の労働者たちは、馬に乗りながら牛にロープをかけるなど、日々の仕事とつながる馬術を披露した。この馬術大会が進化し、9つの技術を競うチャレアーダになった。

その9つの技術のうちの1つ「ラ・カラ」には、走る馬の手綱を引いてスライドさせる競技がある。その迫力をカースタントにたとえる人もいるほどで、ネットでも動画が話題になっている。

競技は、こんなふうに行われる。メキシコの伝統衣装を着た騎手が馬に乗り、走路の端で待機している。馬は勢いよく駆け出すし、白線の引かれた細長い枠の中に入ると、乗り手が手綱を引く。いわゆる急ブレーキの状態だ。馬は後ろ脚に重心を移して土の上を滑り、6メートルほど先で前脚を上げて停止する。家族連れでにぎわう観客席からは拍手が沸き起こる。

この馬の「スライド」競技には倫理的な議論もある。この競技は馬にとって危険なのではないかというのだ。

米テキサスA&M大学の准教授で、大型動物の外科を専門とするアシュリー・ワッツ氏によれば、このスライド競技や騎手が手綱を使って馬に規定の動きをさせる馬術競技では、馬への負担は人間のアスリートの筋肉にかかる負担と変わらないという。

馬が「けがを抱えていなければ」安全だとワッツ氏は話す。「むしろ適度の運動は筋骨格系を健康に保つ効果もあるでしょう」

とはいえ、酷使と反復動作が原因で野球の投手がひじを痛めるように、ラ・カラに出場する馬たちも、後ろ脚に関節炎を起こすことがある。

メキシコの女性馬術競技「チャーラ」の振興を目的とする非営利団体チャーラ・インテルナシオナル・デ・ラス・アメリカスの設立者クリスティーナ・カブラル氏は「スライドを行う馬はほかのことには使いません」と話す。「馬はトレーニングを積んでおり、馬の体のケアもきちんとしています」

「虐待が一度もなかったとは言いませんが、私たちの文化は虐待を目的としたものではありません。とはいえ、私たちは、改善を拒むものではありません。もっとうまく動物を扱う方法があるという人がいるなら、『そのことについて話し合いましょう』と私たちは答えます」とカブラル氏は話す。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年11月2日付記事を再構成]

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