マネーコラム

カリスマの直言

一時のブームに乗った成長に踊らされるな(澤上篤人)

日経マネー

2018/11/26

写真はイメージ=PIXTA
日経マネー

澤上篤人(以下、澤上) 米アップルや米アマゾン・ドット・コムといった新興企業の株価時価総額は夏にかけて大きく伸びた。IT(情報技術)関連の企業などの話題が頻繁にマーケットをにぎわしている。そのあたりに焦点を当てて、今回も草刈とつれづれなるままに語り合ってみよう。

■人々の消費はどこへ向かうのか

澤上篤人氏(撮影:竹井俊晴)

澤上 経済は、いってみれば人々の毎日の生活が集まったものである。どういった方向で、人々がお金を使うかが産業構造に大きな変化をもたらす。

日本経済が高度成長を続けた頃は、人々の所得がどんどん増えていき、大衆消費社会が出現した。その流れに乗って、スーパーマーケットという新業態がグングンとのし上がっていった。流通革命と騒がれたものである。

草刈貴弘(以下、草刈) 消費者の動きはダイナミックに変わっていくものですよね。日本経済新聞の「私の履歴書」で、すかいらーく創業者の話が掲載されていましたが、当時の消費者の移り変わりや街の形が変わっていく様が描かれました。特に東京の郊外の変化は本当にものすごい勢いだったのでしょうね。

澤上 また、家電や自動車といった耐久消費財への需要が爆発的に伸びて、日本を代表する産業へと急成長を遂げた。ソニーやホンダ、トヨタ自動車といったところが、世界企業として躍り出ていった。

その後は、やはり携帯かな。かつては家計消費の中には存在しなかったスマートフォンなど携帯関連への支払いが、今ではひとかどの費用項目として定着した。それだけ、携帯関連のビジネスは大成長したわけだ。

草刈 そういった意味では、俗にいわれる消費が「モノからコト」に変わっていった象徴と言えます。高度経済成長期が終わり、成熟社会へと移っていく中でモノを買う段階は過ぎて、時間を使うことにお金を払うようになったわけです。人が1日に使える時間は限られている。その中で何に消費する時間が充てられるか。最近ではスマートフォンとにらめっこが増えたということなんでしょうかね。確かに、電車内でゲームをしている人が本当に増えましたから。

澤上 気を付けたいのは、一時のブームに乗った成長企業に長期投資家は踊らされないことだね。

その時々ではすごい勢いにあるから、株式市場では大騒ぎする。ところが、しばらくすると世の中から忘れ去られているといったケースが実に多い。

一方、本質的な成長企業は違う。例えばダイキン工業だ。エアコンが、地球温暖化と欧州から新興国へと拡大普及していく流れを見事に捉えた。それが功を奏し、今や世界最大のエアコン会社となった。同時に、脱フロンの冷媒でも世界を押さえている。実に強いビジネスベースを築き上げたものだ。こういった長期視野のビジネス戦略には安心感を覚えるよね。

草刈 投資で言えば1つのバズワードに踊らされるなということでしょうか。一時期の液晶や太陽光発電パネル、シェールガスもそうでした。最近であればAI、フィンテック、ブロックチェーンなどなど。それらはITの話であってそれ自身がビジネスなわけではないはず。しかし、それに関連しそうだというだけで株価が急上昇したり、巨額の資金が流れ込んだりといった現象が起こってしまう。技術者がリスクを取って起業し、その分野を発展に導くことは素晴らしいことだと思います。

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