「わたしは正しい認識さえできれば、勝ち方はどこかにあると思っています。大体負けるときは認識が間違っているんです。自分は強いと思っていても実は弱いとかですね。そこのずれが問題だと思います。わたしは日本の状況をしっかり認識して、どのような戦い方があるのかをきちんと考えれば、何かやりようがあると思っています。ただ、そこまでどうやっていくか。いろんな事例を出していく必要がありますし、誰かが成功例をつくりさえすれば、『俺もできるかも』みたいにみんなのモードが変わって、何か起こるかもしれないなと思っているのですけれど」

――AIがファッションに関わってくることはあると思いますか。

「あるでしょうね。AIの画像認識による学習で、縫製の自動化が進むでしょう。農業や建設など、人間が目で見て作業しなければならない仕事がどんどん自動化していきます。縫製はそうした作業のひとつにあたります。人手がかかる作業ですが、いずれはかなりの部分まで自動化できるはずです」

「少し前に東北地方の縫製工場で、いろいろな作業を見学させていただきました。そこではあるブランドのスーツをつくっていたのですが、すごく手がかかっているのに驚くと同時に『これなら値段が高くても仕方がないな』と思いました」

「工場の方が言われるには、本当に人の体に合ったスーツというのは、ハンガーにかけるとシワが出て、きれいにかからないんだそうです。あつらえた人が着るとぴったりするのだと。であるなら、あれだけ丁寧につくられているのですから、『既製服よりオーダースーツの方がいいよな』と思いましたね」

「さらにAIとファッションでいえば、ファッションの格好いい、格好悪いみたいなことについては、『この人の格好よさ』をスコアで出すことが多分できるようになります。ファッションでもAI活用がどんどん増えていくでしょうが、『その人らしさ』とか、ストーリー性とか、そういった部分では人間の役割はすごく重要であり続けるだろう思います」

松尾豊
1975年生まれ。東京大学工学部電子情報工学科卒。同大学院博士課程修了後、産業技術総合研究所研究員に。スタンフォード大学客員研究員を経て、2007年より東大に。

聞き手/平片均也 撮影/筒井義昭

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