V9の原点は4年生の雑用 帝京大ラグビー監督の指導帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督(上)

――「命懸けでボールを追うな」と話しているそうですね。これも体育会のイメージとは違います。

「入学したばかりの新入生など、大学ラグビーのレベルに慣れていない学生だとタックルされるだけでも危ない。良いプレーと安全性の2つのことに集中できない選手の場合は、まず自分を守ることに集中するようにと言っています」

「これは勝つためでもあります。チームがなかなか勝てなかったころは、試合前にケガ人が続出することが多かった。せっかく積み上げたものを出し切れなければ意味がありません。10年ほど前から定期的に血液検査をして疲労度やトレーニング効果を数値化し、トレーナーや栄養士と話し合う取り組みを進めています。自分の今の状態を客観的に知ることでケガの予防になり、目標に向かいやすくなります」

入部時に長期と短期の目標を考えてもらう

日体大のラグビー部ではフランカーとして活躍(ボールを持っているのが本人)=岩出氏提供

――コミュニケーションの方法として、米国海軍が使っている情報伝達手段「SBAR(注)」も教えているとか。

「SBARとは簡単にいうと、自分で情報収集をして、その情報を整理して、自分なりの提案を言うことです。何か相談するときも『どうしたらいいですか』ではなくて、主体的に計画してもらうための訓練の1つです。これは臨機応変に対応できる力にもなります」

(注)「Situation(状況)」「Background(背景)」「Assessment(評価)」「Recommendation(提案)」の頭文字をとったもの。軍隊のほか、救急医療の現場などでも使われる。

――入部してまず短期的な目標と卒業後の長期的な目標を考え、いつから何をすべきか考えさせるそうですが、まるで就活ですね。

「ダブルゴールと呼んでいます。長期的な目標はラグビーに限らず、例えば自分が入りたいと思う企業に就職した後も活躍できる人になりたいといったことを考え、そこから目の前の活動や大学4年間での目標を考える。そうすると目の前の練習への取り組み方やミーティングでの姿勢も変わってきます。人からアドバイスを受けてやるんじゃなくて、自分流で作って自分で決める、そういう力をアップさせる狙いです」

「もちろん選手たちはラグビーで勝ちたいと思っていますが、ラグビーだけが彼らの一生の保証にはならないですよね。できるうちは打ち込んでもらえたらと思いますが、人間的な成長というのは30代、40代になってもずっと求められるものです。大学の4年間は目標に向かって頑張るレッスンの場だと捉えています。未来につながる4年間にしてもらいたい」

――卒業生の進路も変わりましたか。

「ラグビーの日本代表に選ばれたり、一流企業に就職が決まったりする学生が増えました。ただ、大学で優勝を経験して自信を持つのもいいのですが、社会人になったらもう一度自分をゼロにして、それからゼロを1にしていく。変わり続ける努力をすることが大事だという話をいつもしています」

岩出雅之
1980年日体大卒。学生時代はラグビー部でフランカーとして活躍。卒業後は教員となり、滋賀県内の公立中学・高校に勤務。滋賀県立八幡工業高校では7年連続で全国大会出場に導いた。96年に帝京大学ラグビー部監督。帝京大スポーツ医科学センター・医療技術学部スポーツ医療学科教授も務める。

(安田亜紀代)

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