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山田錦じゃワクワクしない 埼玉・石井酒造の地酒魂 ぶらり日本酒蔵めぐり(6)

2018/11/21

石井酒造の酒は種類によって味わいが大きく異なる(東京都文京区、名酒センター御茶ノ水店)

埼玉県幸手市にある創業178年の酒蔵、石井酒造の社長である石井誠さんは31歳という若さを武器に、消費者の耳目と舌に訴える斬新なアイデアを次々と発信している。20代だけが携わるマーケティング・プロジェクト、シャープとのコラボレーション――。常識を打ち破り、日本酒ファンを開拓する挑戦が始まった。

100種類以上の日本酒銘柄をそろえる地酒のアンテナショップ、名酒センターに石井酒造の3つの銘柄が並んでいる。「飲みに行ったついでに営業したところ、置いてもらえるようになりました」と石井さん。御茶ノ水店(東京・文京)で飲み比べてみると、純米、純米吟醸、純米大吟醸がそれぞれ、ずいぶん違った顔つきで迫ってきた。

26歳で社長に就いた8代目、石井誠さん

これは石井酒造の特徴らしい。「蔵としての一貫性を追求するよりむしろ、純米酒、大吟醸など種類によって酒造りの設計段階から異なる方向を目指し、差別化しています」。「純米大吟醸 一酔来福」は原料米が五百万石。すっきりとして淡麗だ。対して、「純米酒 豊明」は日本酒度が-16。芳醇(ほうじゅん)でかなり濃厚な味わいだが、しつこさは感じさせない。ちなみに日本酒度は水に対する糖分などの比重を示す数値で、一般にマイナスに振れるほど甘口とされる。

この濃厚さはどこから来るのか。石井さんは「仕込み水を少なめにしています」と明かす。通常、コメ1に対して水1.3~1.4の比率で仕込むところを「水の割合を少なくし、醪(もろみ)の段階で発酵しにくい状態を保ち、濃厚さを引き出します。スペックとしてはかなり甘みが強くなります」

自動で温度管理できるタンク もうすぐ絞り工程に移るという

淡麗辛口は一時ほどのブームではないが、飲み屋で注文する際につい「淡麗」「辛口」などと口走る日本酒好きは少なくない。淡麗辛口し好に逆行して、純米酒 豊明は設計された。「淡麗辛口は合わせる料理を選びます。こってりした洋食や脂っこい肉料理には酒が負けてしまいます。味の濃い料理でも合わせられるのがうま味の強い酒です」

女性の飲み手が増えていることも意識している。「香りの華やかさや、少し甘みを感じられる味わいは女性や若者を中心に新しいニーズに合致しているはずです」と石井さんは分析する。試飲会やイベントでじかに声を聞くうち、日本酒に対するイメージが変化する兆しを感じ取っているという。

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