『ポツンと一軒家』 秘境暮らしと人生ドラマに反響
日本各地の山奥などにポツンと存在する一軒家。衛星写真を手掛かりにその地に赴き、地元の人の話も聞きながら目的の一軒家を訪ねて住人の人生に迫る。テレビ朝日系バラエティー「ポツンと一軒家」は、8回の特番を経て10月から日曜のゴールデンタイムでレギュラー放送が始まった。
「ポツンと一軒家」は2017年1月から9月まで放送されていた「人生で大事なことは○○から学んだ」から派生した企画。
制作する朝日放送テレビプロデューサーの植田貴之氏はこう振り返る。「放送作家が『秘境に住んでる人って気になるよね』と言い出したんです。雑談するうちに『ちょっとグーグルアースで見てみますか』となって」
適当な山をギューっと拡大していったらポツンと家がある。「『本当に誰か住んでるのかな』とか、話も盛り上がって、ディレクターにロケハンがてら行ってみてもらったのが最初です」
撮った映像を会議で流すと、道中の様子はもちろん、たどり着けるか分からないドキドキ感もあり、スタッフ全員がくぎ付けに。「これはいける」と、すぐに番組内の企画として立ち上げた。放送後は出演者や視聴者から好感触を得られた。
それが数字となって表れたのが昨年10月。「人生で~」は終了したが、特番でこの企画を放送したところ、激戦の日曜のゴールデンタイムに視聴率15.5%を獲得した。「スタッフは慣れない数字に絶句してました」(植田氏、以下同)
今年に入ってからは7回特番で放送。そのうち6回が12~13%台で、レギュラー化はその実績が評価された形だ。
ロケはディレクターとカメラマン、ADの3人1組。最初はロケ地を決めるのに、各スタッフがグーグルアースで見つけた「ポツンと建っている一軒家」を印刷して持ち寄り検討していた。
実際に行ってみると9割は空き家や廃虚で、管理者や持ち主が見つからないと、建物すら放送できない。今では「たどり着いて取材ができればどこでもいい、という方針です(笑)」。
目的の一軒家を見つけるまでのハラハラする感じが注目されがちだが、特番を続けるにつれ、そこに住む人の暮らしぶりや、なぜその地に行き着いたのかなど、人生ドラマに一番引きつけられるのだと気づいた。今はいかにその部分を伝えるかを意識している。
ロケでは基本、ずっとカメラを回し、インタビューは出会ってから姿が見えなくなるまでを押さえる。
スタッフは植田氏も含め「大改造!!劇的ビフォーアフター」(02~16年)を手がけた人間が大半。「ドキュメントバラエティーが得意なチームで、一般の方への接し方や演出、ロケなどはノウハウを持っていました」
MCは所ジョージで、レギュラーパネリストは林修。自由奔放な所に常に知識を蓄えている林と対照的な2人のコメントも面白い。
以前放送した空き家が「実は昔、祖父母が住んでいた家で、懐かしく見ました」など、視聴者から心温まるメールも届き、スタッフの励みになっているという。
「03年に『ビフォーアフター』が流行語大賞のトップテンに入ったんです。『ポツンと一軒家』もそのくらい世間に浸透したらうれしいです」
(「日経エンタテインメント!」11月号の記事を再構成 文/内藤悦子)
[日経MJ2018年11月9日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。