「糖化を進めないためには、世に言う『適量』を守るのが賢明です。日本酒なら1日1合、ビールなら中瓶1本、ワインならグラス2~3杯程度です。我々の研究に限らず、他の研究からも、アセトアルデヒドとAGEsの生成が密接に関係していることは確実だからです。翌日に残るような深酒は控えたほうがいいでしょう。ちなみに、喫煙者、睡眠不足の人も体内のAGEsの量が高いことが確認されています。お酒好きの愛飲家で、深夜まではしご酒をするような方はさらに注意が必要です」(八木さん)

深夜まで飲み歩いていると、胃もたれもあって、かなりの確率で朝ごはんが食べられるような状態ではなくなる。「朝食抜きは昼食後の血糖値の上昇が急激になり、糖化を促進させやすい」と八木さん。血糖値ケアのためにも朝食がきちんととれるような飲み方を心がけよう。飲み過ぎ(酒量が多い)や睡眠不足が良くない理由は、こんなところにもあるのだ。

日本酒やワインが糖化を抑えてくれる

酒量が分かったところで、次に気になるのがお酒の種類による違いだ。お酒といっても、ビール、日本酒から、ワイン、焼酎、ウイスキーなどまでさまざまある。糖化による影響を少しでも抑制するには、どんな種類のアルコールを選べばいいのだろうか。

「実は、お酒の中には、AGEsの生成を抑制するものがあるのです。ウチで面白い研究をやっておりまして…」と前置きする八木さんの口から出たのは…。

「日本酒です。日本酒は糖質を含むので意外と思われるかもしれませんが、私たち糖化ストレス研究センターでの研究から、量さえ飲まなければ抗糖化作用が期待できることが分かりました 。醸造アルコールを添加した本醸造タイプ、純米酒の2タイプに分け、精米歩合やアルコール度数に大差がない京都産の30種類の日本酒を使って実験したところ、醸造アルコールの添加の有無に関係なく、AGEsを抑制することが確認されたのです(図4)」(八木さん)

血清アルブミン(たんぱく質)とブドウ糖による糖化反応の、日本酒(清酒)による影響を調査した結果。グラフはAGEs生成率データ。日本酒を加えずに試験したとき(添加なし)の生成量を100としたときの、30種類の日本酒を添加して測定したとき(日本酒添加あり)の平均値。(Glycative Stress Res. 2017; 4(2): 80-86.)

おお! 日本酒ファンには何ともうれしいお言葉。

現在、この研究は継続中で、日本酒のどの成分にAGEsを抑制する効果があるかは、まだ明確になっていないという。ただし、八木さんによると、近い将来、成分の特定が期待できるそうだ。左党には朗報である。

なお、日本酒にAGEsの生成抑制効果が期待できるとはいえ、アルコール自体は糖化を進める存在。あくまで「適量」を守ることが大前提であることをお忘れなく。

日本酒にそんなうれしい効果があるとなると、他のお酒がどうなのか、気になるところだ。

「日本酒と同じ醸造酒であるワインもまた抗糖化作用があります。これはぶどうに含まれるポリフェノールによるものと考えられます。特に良いとされるのはポリフェノールを豊富に含む赤ワインです。ポリフェノールは抗酸化作用もありますから、糖化、酸化ともに抑制する効果が期待できます。もちろん、こちらも適量が基本です」(八木さん)

その他、樽で熟成させるウイスキーも、樽由来のポリフェノールが含まれることから、AGEsを抑制する効果が期待できるという。今後の研究にさらに期待したい。

通勤時は階段を! 食後の運動で血糖値上昇を抑える

さて、これまでは食生活を中心に糖化を抑制する方法について語ってきたが、他の生活面ではどういったところに注意したらいいか、八木さんにアドバイスをもらった。

八木さんは食後の運動が血糖値の上昇を抑えて、糖化の進行を抑制してくれると話す。

「朝の通勤時は『階段』を使うようにしてみてください。通勤時間は朝食をとってから1時間後くらいにあたり、ちょうど血糖値が高くなっている時間帯です。カラダを動かすことで、食事によって上がった血糖値を早く下げられます。食後に階段のステップ運動を3分間するだけで血糖値の下がり方が早くなったという報告もあります。また、日中にデスクワークをしていると、昼食後の午後1~2時くらいに眠くなりますよね。会議などでの移動は、眠気覚ましも兼ねて、血糖値を早く下げるために、エレベーターでなく階段を使うようにしましょう」(八木さん)

このくらいの運動なら、無理なく続けられそう。塵(ちり)も積もれば山となる。食事の後は、階段を使う、1つ前のバス停で降りて歩くなど、「ちょい運動」を意識するだけで、少しずつ糖化を抑えることができる。

◇  ◇  ◇

血糖値上昇を抑える食生活を心がけ、抗糖化作用のある食材を意識してとり、お酒は適量を守りつつ、意識してカラダを動かし、睡眠もきっちりとる――。

コゲないカラダになるための施策は地味に見えるかもしれないが、なが~く、健康に酒を飲み続けることを考えればそう悪くはない。実際、これを実践していると、飲んで食べても体重が増えにくいし、体調もすこぶる良くなる。実践を始めてから1カ月ほどだが、心なしか、お肌のハリも戻ったような気がする(筆者経験談)。

見た目、中身ともに若々しい左党であるためにも、「糖化」を意識した飲み方をしてみてはどうだろう。

八木雅之さん
 同志社大学生命医科学部/糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授。1983年、京都工芸繊維大学卒業、1989年京都府立大学大学院農学研究科博士課程修了。臨床検査機器・試薬・機能性素材などの研究開発メーカーを経て2011年より現職。糖化・AGEs測定法の研究、糖化ストレス抑制対策・抗糖化素材の研究などを手がける。日本抗加齢医学会評議員、糖化ストレス研究会理事。『老けない人の食習慣』(辰巳出版)の監修などを務める。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト、図版 増田真一)

[日経Gooday2018年11月6日付記事を再構成]

「日経Gooday 30+」の記事一覧はこちら

医療・健康に関する確かな情報をお届けする有料会員制WEBマガジン!

『日経Gooday』(日本経済新聞社、日経BP社)は、医療・健康に関する確かな情報を「WEBマガジン」でお届けするほか、電話1本で体の不安にお答えする「電話相談24」や信頼できる名医・専門家をご紹介するサービス「ベストドクターズ(R)」も提供。無料でお読みいただける記事やコラムもたくさんご用意しております!ぜひ、お気軽にサイトにお越しください。