スーツスタイルを仕事に、人生にどう活かすかは、一人一人の働き方や自己プロデュースのあり方によって大きく違う。スーツスタイルに“普遍”はあれど、スーツの選び方に絶対の正解はないのだ。着る人を魅力的な人物に見せる服=スーツを、アナタの“これから”にどう、上手に役立てるか?その術を様々な目線から、明らかにしていこう。
(左から)
森岡 弘さん ファッションディレクター/編集者からスタイリストへ転身し、現在は企業向けの講演なども多数こなすオールマイティな知性派。
金森 陽 MEN'S EX編集長/新しいモノもコトも大好き。世相の変化を見つつ、大人への新しいライフスタイル提案を日々模索中。
山浦勇樹さん 三越伊勢丹 バイヤー/クラシコ系インポートブランドの担当バイヤー。今年からメイド・トゥ・メジャー担当にも就任。
中村達也さん ビームス クリエイティブディレクター/ドレスクロージング部門の統括役。クラシックとは“普遍”であっても“不変”ではないと語る。
ライフスタイルによって変わるスーツの需要
金森 さて、クラシック回帰の一方で、スーツの二極化も進んでいると山浦さんは仰っていましたが……。
山浦 本格派とイージー派の二極化ですね。クラシック回帰の影響もあり、スーツをただ漫然と着るのではなく、しっかり選んで、きちんと装うことを楽しみたいというポジティブな購買が増えています。一方それとは対照的に、昨今の働き方や装い方の大きな変化に伴い、より機能的で、ストレスのないスーツを求める方も増えています。高機能を謳った生地も、今まで以上に多彩に登場してきていますし。
金森 それらはどういった層のビジネスマンに求められているのですか?
山浦 ITなどのクリエイティビティ、あるいは仕事のパフォーマンスを重視したいという方ですね。今はノータイでOKという職場も多くなってきました。スーツにTシャツで仕事をされている方も、もはや珍しくありません。
中村 ひと昔前は、スーツのインナーといえば最低限ポロシャツでしたが、そんなイメージも変わってきました。イージーなスーツにTシャツ、スニーカーも、ひとつのスタイルとして確立されてきたといっていいでしょう。
森岡 スーツのいいところって、かなりカジュアルダウンしてもきちんと見えるところにありますよね。仕事着のストレスを極力減らしたいという方にとって、イージースーツはとても理に適った選択ではないかと思います。
本質を求める人と、新しい価値を追求する人。スーツの買い方が二極化していると感じます(山浦)
山浦さんが考える “今の、そしてこれからの”スーツスタイル(1)
“スーツこそ男の服”と考える本質重視の装い
■LA SCALA/ラ スカーラのビスポーク
ナポリ仕立てに学んだ山口信人氏が2016年にスタートさせたビスポークブランド。流れるようなノボリや大きな上襟、裾まで通したフロントダーツなど、ナポリ的な温もりにあふれたスーツだ。“本格”をスーツに求める人に人気なのは、こんな特別感のある一着。納期約2ヶ月~。 33万円~〈オーダー価格〉(伊勢丹新宿店)
「本格志向な方にオススメな生地といえば、やはり英国メーカーが筆頭格。特にハーディ ミニス(写真左)のようなビスポークテーラー御用達の生地が注目です。またイタリアでもVBCの『21マイクロン』(写真右)のようなタフな生地提案を行うところが散見され、こちらも面白いです」(山浦さん)
山浦さんが考える “今の、そしてこれからの”スーツスタイル(2)
既成のルールにしばられない自由でクリエイティブな装い
■T JACKET/ティージャケットのイージースーツ
仕事着としてのストレスを極力減らすことで、ビジネスのパフォーマンス向上を求めるイージー派に最適なスーツがこちら。ジャージーなみに伸縮するポリエステル&ポリウレタン素材を採用し、パンツのウエストもエラスティック(ゴム)&ドローコードというリラックス仕様になっている。 8万円(伊勢丹新宿店)
「機能性服地の進化は目覚ましいものがあります。インポート生地にも、ストレッチ性に優れたトレーニョ1900の『3Dウール』(写真左)や、撥水性を備えたドラゴの『ブルーフィール』(写真右)のような進化形機能素材が続々登場。この分野ではイタリア勢の元気がいいですね」(山浦さん)