2018/11/14

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ですから、建物の状態や構造、修繕すべき部位などについて学ぶ機会がほとんどないのが実情です(5人に4人は宅地建物取引士の資格を持っていない人が営業しているのも個人的には問題とは思います)。

瑕疵の調査や説明の義務はないとの判例も

不動産仲介業者は宅地建物取引業の免許を取得して業を行うので、相当の専門知識や能力を求められるようになってきてはいます。

しかし判例では、不動産仲介業者は不動産取引の専門家として権利関係や建物を新築する場合の建築規制などの調査や説明は求められるものの、建物の物理的な瑕疵(かし)、つまり建築士やインスペクター(住宅診断士)といった専門家の業務にかかる分野で、一見しただけではわからない建物の欠陥や不具合については、原則として調査や説明の義務を負わないと考えられているのです。

このように、不動産仲介業者は建物の構造や劣化状況などのことを聞く対象とは違うのです。たとえ大手の仲介業者であってもそれは同じです。

不安ならば「住宅診断」

大型の中古ビルなどの取引の際も、不動産仲介業者が介在することが多くありますが、建物の調査は買い主が専門業者に委託するのが通常となっています。そこで欠陥の有無や劣化状況を調べるとともに、それらをいつ、どのタイミングで、いくらかけて修繕すべきかを買い主は見積もっているのです。

徐々にではありますが、中古住宅についても同じような考え方が浸透してきています。ホームインスペクション(住宅診断)というサービスは十数年前から広がっており、今年4月からは売り主や買い主に対し、売買契約の前に建物のインスペクションを実施する意思があるかどうかを不動産仲介業者が確認しなければならないルールになっています(詳しくは「中古住宅の売買が変わる 『診断』の意思、確認義務化」をご覧ください)。

筆者も建築士など建物の専門家といえる資格を持っているわけではないので、建物については決して専門家といえません。ですから、買い主に必ずこう言うのです。「建物のことが心配ならば建物の専門家に調査を依頼しましょう」と。

田中歩
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。