ジンクスの語源になった鳥 不気味な動きはヘビの擬態
今回はキツツキの仲間、アリスイが擬態する映像をお届けしよう。アリスイ(学名:Jynx torquilla)は、ヨーロッパ、アフリカ、アジアに生息する小さな茶色いキツツキの一種で、日本でも見られる。驚くと、音をたてながら首を横に振る。これは、ヘビの真似をしているのだ。
映像を撮影したのは、デンマーク、コペンハーゲン大学の学生であるアンデルス・ニールセン氏。同氏は「アリスイを捕まえると、いつも頭をくねらせてヘビのまねをします」と話す。観測所では、生息数を確認するため、アリスイを捕まえて足環を付ける作業を行う。この恒例行事に参加したニールセン氏が動画を撮った。
「頭と首を左右に動かすのは、とても奇妙ですよね」とニールセン氏。人間にはアリスイのこの動作が不気味に感じられ、欧州では魔術と結びついていると考えられたこともあった。身を守るための擬態として、この戦略は天才的とも言える。鋭い爪はなく、すばやい動作や強力な噛みつき攻撃はできなくても、ヘビのふりさえすればいい。
動画のように、人の手の中にいると、アリスイはヘビそっくりには見えないかもしれない。だが、有名な野鳥専門家で、「Audubon Magazine」誌のフィールド・エディターであるケン・カウフマン氏によれば、アリスイが巣を作る薄暗い木の洞では、オコジョやタカなどの捕食動物はヘビだと思って近づかない、と話す。
「木の洞の中にいるアリスイが、ヘビのような外見と音で体をくねらせれば、たいていの捕食者は逃げていきます」とカウフマン氏は話す。「ヘビに似ていれば似ているほど、敵から身を守る効果は上がるのです」
ところで、アリスイはキツツキの仲間だが、外見はだいぶ違って見える。木をつつくことはせず、ほかのキツツキが苦労して作った穴に巣を作る。また、地上で長い舌をつかってアリを捕まえて食べる。これも、ほかのキツツキとは違う。
外見や行動はキツツキに似ていないものの、共通する特徴はある。その一つが、筋肉がついた長く柔軟な首だ。カウフマン氏は、アリスイがヘビのまねをできるのは、この特徴があるからこそだと言う。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年10月9日付記事を再構成]
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