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あって当たり前がない 活況の建設に「ボルト」ネック 1割強の値上がり、母材の特殊鋼線材が品薄に

2018/11/15 日本経済新聞 朝刊

ハイテンションボルトは引っ張りに対する強度が高く、高層ビルや橋梁の建設に用いられる

建物の鉄骨をつなぐハイテンションボルト(高力ボルト)の不足が建設業界の難題となってきた。東京五輪・パラリンピック関連の建設や都市再開発が進む一方、母材となる特殊鋼線材が品薄となり、生産が需要に追いつかない。取引価格は半年で1割強上昇した。ボルトの不足が建設需要に水を差しかねないとの懸念も出てきた。

「日ごろはあって当たり前という印象だった部材がにわかに足りなくなった。建設現場は混乱している」。鉄鋼商社の担当者は高力ボルトの不足に懸念を強める。「工具通販サイトで欠品が目立つ」「フリーマーケットアプリに高値で出品されていた」。関係者にはそんな観測も飛び交う。

高力ボルトは引っ張りに対する強度が高く、高層ビルや橋梁の建設に用いる。今夏あたりから品薄が話題になり、建設現場では必要量を確保するため、通常より多く発注する動きが一部に出てきた。メーカーに加えて流通の在庫も減り、需給の逼迫感が増している。

なぜ、数ある鋼材の中でも高力ボルトが特に足りないのか。背景にはそもそも供給の担い手が限られることがある。

メーカーは新日鉄住金系の日鉄住金ボルテンや、日本ファスナー工業(大阪市)など国内の数社が中心だ。2008年のリーマン・ショックによる需要減を経て企業の撤退や再編が進み、国内の生産能力は縮小した。

「ボルトメーカーが母材の特殊鋼線材を十分に仕入れられなくなった」(鉄鋼商社)との見方も多い。

高力ボルトの母材となる特殊鋼線材は、自動車生産に使う鋼材の母材にもなる。国内の自動車生産が堅調に推移するなか、母材が建設に使う高力ボルト用に十分回らなくなった。母材の不足が響き、高力ボルトメーカーの加工設備はフル生産に達していないようだ。

建設現場が調達する高力ボルトの価格は1トン28万円程度と、今春に比べ3万円ほど上昇した。価格が高騰しても調達先の切り替えは難しい。「メーカーからの新規入荷は18年度末近くになる可能性が高い。現状は得意客に供給するのが精いっぱい」。高力ボルトをメーカーから仕入れて建設現場向けに販売している流通企業の幹部は語る。

建設用鋼材では梁(はり)に使うH形鋼や大径角形鋼管(コラム)も値上がりしている。だが、建設用鋼材を現場でつなぎあわせるボルトが足りなければ工事自体が進まない。小さな部材に建設業界の大きな懸念が集まっている。

(岡森章男)

ハイテンションボルト(高力ボルト)
鉄骨の建築物などで鋼材を接合するのに用いる部材。ボルトで締めた際に接合する鋼材の間に生じる摩擦の力などを利用する。一般的なボルトに比べ、高い強度と引っ張り力で接合できる。

[日本経済新聞朝刊2018年11月9日付]

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