株式投資ほどのリスクは取れないが、分散投資でリスクを下げつつ少しでも資産を殖やしたい。こんなニーズに応えた商品として、投資信託が人気を博している。ただ、一口に投信といっても中身は多種多様。自分に合った商品を見つけるには、どうすればいいのか。投信初心者の疑問をプロが分かりやすく解説する。
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Lさん(以下、L) 銀行で投資信託を買った個人投資家の半数近くが損失を抱えている、という内容の新聞記事を見ました。投信ってもうかりにくい商品なのでしょうか。
吉井崇裕(以下、吉井) その記事は私も気になったので、色々と調べてみました。表1は、2018年3月末時点で5年以上の運用実績がある3008本の投信を対象に、リターンが0%未満あるいは+2.5%未満だったものの本数と、対象投信全体に占める割合を示したものです。
L +2.5%未満で集計しているのはなぜですか。
吉井 対面取引の金融機関の多くでは購入時に2~3%の販売手数料が掛かるので、それ以上のリターンが出ないと利益になりません。
L なるほど。それで結果は?
吉井 過去1年または3年の期間で見ると、リターンが+2.5%を下回った商品の割合が4割を超えています。一方、5年の期間で見ると1割ちょっとまで下がっています。Lさんは、この結果から何を読み取りますか?
L 多くの投資家は投信の保有期間が3年以内であること。それと、長い期間持てば損する確率が低くなるということでしょうか。
吉井 その通り。もし5年間保有している投資家が多ければ、損失を抱えている人の割合はもっと低いはずです。実は、日本の個人投資家が投信を保有する期間は平均で2~3年といわれています。
L なぜでしょうか。
吉井 一概には言えませんが、金融機関の販売員による勧誘が原因の可能性はあります。一般に大手金融機関では、2~3年ごとに顧客担当者が交代します。担当者が交代したタイミングで、市場見通しの変化などを理由に新たな商品を提案され、それに従って取引すると、結果的に短期間での乗り換えが発生することになります。
L 表2は何を示すのですか。
吉井 対象の3008本の投信のうち純資産総額上位の100本、つまり金融機関で人気の商品について同様の集計を行ったものです。
L 過去1年と3年の割合が表1より上がっていますね。逆に5年の割合は下がっています。
吉井 なかなか興味深い結果です。推察されるのは、3年以上前に好調だった商品、かつ良くも悪くも結果が振れる商品、つまり値動きが大きい高リスクの商品を高値づかみしている可能性です。
L 投信自体が悪いのではなく、売買のプロセスに問題があるのかもしれませんね。
吉井 はい。投信は、自分に合った商品を選んで長く付き合えば、リスクに見合ったリターンが期待できる商品だと思いますよ。

[日経マネー2018年12月号の記事を再構成]