中国のシリコンバレーで見た貿易摩擦の行方(藤田勉)一橋大学大学院特任教授

第2に、通貨人民元の下落である。人民元の対ドル相場は、今年の高値から直近10月29日の安値まで10.0%下落した。結果として、米国の関税引き上げの影響はかなり緩和されるとみられる。

第3に、中国の貿易構造の変化である。かつて中国の輸出品は玩具、繊維など軽工業品が中心であったが、最近では電機、自動車など高付加価値製品にシフトしている。特に、iPhone(アイフォーン)に代表されるように、米国企業が生産を中国に依存している高付加価値製品が多いため、米国が中国に対し徹底的に制裁を実施することは難しい。

20年大統領選挙を控えて、トランプ氏は対中国強硬姿勢を取り続けることであろう。世論調査によると、共和党支持者の間ではトランプ氏による対中政策は支持率が高い。ただし、米国が過度に制裁を加えると、世界の経済や株式市場が大混乱に陥り、結果としてトランプ政権に大打撃を与えることになりかねない。

さらに、中国政府も金融緩和などの措置を打ち出しており、必要があれば追加の経済対策を実行することだろう。よって、米中貿易摩擦の影響が部分的に出ることは避けられないが、極端な事態に至る可能性は低いと考えられる。

中国の強みは人材の厚みと金融力

中国の強みは、人材の厚みと金融力である。90年代以降、多くの中国の若者が海外留学している。深圳などでも、米国の一流大学で博士号を取得した人材が中国に戻って起業するケースが増えている。さらに、巨額の利益を稼ぎ出すアリババ、テンセント、華為技術(ファーウェイ)、中国平安保険などが豊富な資金を背景に、有力なベンチャー企業に積極的に出資や買収を行っている。さらに、中国内では有力なVCファンドが育ち始めている。こうして、米シリコンバレー同様、ハイテク企業を生み出すエコシステム(生態系)が深圳や北京で生まれている。

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