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カリスマの直言

中国のシリコンバレーで見た貿易摩擦の行方(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2018/11/12

「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深圳では高層ビルが次々建設されている
「中国は米国から厳しい圧力を受けた結果、市場を開放し、かつ知的財産権の重要性を認識しつつある。これらは長期的に中国経済、ひいては世界経済の大きなプラスとなろう」

米国中間選挙はおおむね事前予想通りの結果に終わり、市場に安心感をもたらした。今後の最大の注目点は米国と中国の貿易摩擦の行方である。世界最大の経済大国と世界2位の経済大国の激突は市場に大きな影響を与えかねない。

10月28日から5日間、筆者が代表を務める一橋大学大学院フィンテック研究フォーラムは中国の深圳を訪問した。経済産業省の協力を受け、ベンチャーキャピタル(VC)ファンド、フィンテック企業、ユニコーン(未上場で評価額が10億ドルを超す企業)などを視察した。

「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深圳を訪問してみて、中国ハイテク企業の成長は本物であると感じた。中国製品が「安かろう、悪かろう」であった時代はとっくの昔に終わった。移動体通信機器、太陽光パネル、ドローン(無人小型機)など世界最先端の技術において、中国企業は日本企業をしのぐ。

■中国ベンチャーは規模、質で日本しのぐ

IT(情報技術)サービスにおいても、株式を公開しているアリババ集団、騰訊控股(テンセント)のみならず、配車アプリの滴滴出行など多くのユニコーン企業が育っている。ベンチャー企業の育成においても、その規模、質は日本を大きくしのぐ。

今回の訪問では現地の研究機関との研究会を行い、米中貿易摩擦の影響についても意見交換した。しかし、中国の経済成長率が年6%台と高水準であることもあり、現地では比較的冷静に受け止めているように思えた。

米中貿易摩擦の元凶は、貿易不均衡である。米国の貿易赤字89兆円のうち、対中貿易赤字は41兆円を占める(2017年、1ドル110円換算)。トランプ米大統領は18年3月に通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を発表した。対中輸入額56兆円の約半分が追加関税の対象となる(追加関税率25%、18年9月から発動された第3弾は当初10%、19年より25%)。中国側も対抗措置として、米国からの輸入額17兆円のうち12兆円を追加関税の対象とした。

■3つの理由で米中貿易摩擦の影響は限定的

これだけ見ると、米中貿易摩擦の影響は大きいようだが、実際にはその影響は限定的となろう。その理由は以下の通りである。

第1に、両国の経済規模が大きいため、国全体として関税引き上げ額の影響は小さい。米国の国内総生産(GDP)は2140兆円(17年)であるため、対中輸入額56兆円はその2.6%にすぎない。米国側の関税引き上げ額は4兆円(第3弾分は10%で計算)なので、これも対GDP比0.2%と小さい。中国にとっても、対米輸出額42兆円はGDPの3.6%、米国側の関税引き上げ額は対GDP比0.3%である。

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