これは西日本の方が歴史的に人の移動がダイナミックだったためだと考えられる。

より温暖だった西日本の方が日本列島の歴史では農業生産が有利なので人口が多かった。しかも中国、韓国などアジア大陸文明圏にも近いので人の流入も活発だった。だから各自のルーツを示す名字の種類が増え、1名字当たりの人口が少なくなったのだ。逆に東日本の方は、相対的に名字の種類が少なく、1名字当たりの人口が多い傾向にある。

東日本トップ3の鈴木、佐藤、高橋の人口占有率はそれぞれ2.00%、1.98%、1.44%。一方、西日本トップ3の田中、山本、中村の人口占有率は1.32%、1.12%、0.94%でどれも相対的に西日本の方が低い。だから東日本で多い名字の方が、全国ランキングでも上位にくるのだ。

東西の境界線は? 飛騨山脈と関ケ原

次に47都道府県別の名字ランキングでトップ5の一覧表をみてみよう。

ざっくりと言うと、東日本ではやはり鈴木、佐藤、高橋が上位、西日本では田中、山本、中村が上位にきている。

このことから、もし相手の名字が鈴木、佐藤、高橋だったら「出身は東日本かな?」、田中、山本、中村だったら「出身は西日本かな?」という推測ができる。

東と西の境界はどこなのか? ランキングを分析すると、境界線がはっきりと浮かび上がる。日本海側では新潟と富山との間、太平洋側では岐阜や三重あたりで分布がガラリと変わるのだ。

新潟と富山の県境は北アルプスとも呼ばれる険しい飛騨山脈がそびえ、日本海沿いには「親知らず子知らず」と呼ばれる交通の難所がある。そのため、長い間、東西の人の移動を地形が遮断してきた。だから文化圏がまったく違う。言葉も富山では関西弁に近いが、新潟ではむしろ関東弁や東北弁に近い。食文化もこの境界線をはさんでかなり違う。

太平洋側はどうか? 関ケ原がある岐阜あたりに東西の文化圏の境界線があるようだ。言葉も食文化もここを境に東西で大きく違う。名字の分布もこれに付随して、大きく異なっているというわけ。

たしかに都道府県ランキングをみると、地層のように東西の境界に断層があることが分かる。東から西に向かうと、上位の名字が鈴木、佐藤、高橋から田中、山本、中村に一気に切り替わるのだ。

全体の傾向があてはまらない地域もある。赤く着色したのは全国ランキングで50位以下の名字だが、全体を見渡すと、東日本よりも西日本に全国50位以下の名字が多い。もちろん東北や中部の一部にも全国50位以下の名字は散見されるが、中国から四国、九州へと西に行くほどその割合が明らかに増えてくる。特に大分や宮崎、沖縄では西日本トップ3の田中、山本、中村でさえトップ5に入っていない。これも西日本の方が人の移動がよりダイナミックで、名字の分布が入り交じっているためだと考えられる。

青森では工藤が首位、西日本に多い田中・山本は地形に由来

さらに細かく都道府県別ランキングを追いかけてみよう。

まず目立つのが青森。周辺の名字の分布とは明らかに違う。首位は工藤。次いで東日本に多い佐藤が2位に入るが、あとは佐々木、木村と続き、なんと西日本で多い中村が5位に食い込んでいるのだ。工藤は藤原家の流れをくむ子孫で造営、材木採集などの職工に関連した名字だとされる。本州の最北端だけに名字の分布にも特殊性があるようだ。

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なぜ徳島と大分の首位が佐藤? 武士の移住などが理由か
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