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勤務中1時間ごとに喫煙 会社は法的に制限できるのか 弁護士 志賀剛一

2018/11/8

最高裁は「労働者が実作業に従事していない時間帯でも、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものとして労働時間に該当する」との解釈を示しています。

喫煙離席が休憩に当たるかどうかが争われた事案は複数あり、大阪の居酒屋チェーンの事件が有名です。この事件では「店舗内の更衣室兼倉庫で喫煙しており、何かあればすぐ対応できる状態で、労働から完全に解放されているとはいえない状態」であるとして喫煙が休憩時間に当たらないと判断しました。また別の事案では、社長自ら社員を喫煙に誘い、そこで業務に関する指示を出していた事実が認められて休憩時間には当たらないと認定した判例もあります。

これらの判例をもとに「喫煙による離席=休憩時間ではない」と考えている人もいるようですが、それは早計です。その離席が会社の指揮命令から離脱し労働からの解放を保障された状態かどうかの事実認定の問題となるので、ケース・バイ・ケースであり、店を抜け出して喫煙していた事案では喫煙離席状態が指揮命令下にあるとはいえないとした判例もあって結論は分かれているのです。

■近くのビルで喫煙の公務員に訓告処分

上司が仕事をさせようとしたらすぐに対応できる状態かどうか、仕事をしている場と喫煙所の距離的関係も重要になるものと思われます。喫煙ルームが近くにあればよいですが、最近ではビル全体が禁煙というところもあります。そうなると、職場を抜け出して喫煙所を探すことになりますが、これは会社の指揮命令下にない状態ではないでしょうか。

大阪府では府内の施設の多くを全面禁煙にしていますが、喫煙のため勤務時間中、1日に数回、各15分程度職場を繰り返し抜け出して府庁近くの民間ビルの喫煙室でたばこを吸っていた職員が職務専念義務違反で訓告処分を受けています。公務員には法律上、職務専念義務が規定されています。

民間労働者については職務専念義務が法律上は明文化されてはいませんが、労働契約に付随する義務として当然に存在すると解されており、就業規則や服務規律で必ずうたわれているはずです。したがって、公務員か民間かを問わず、休憩時間外に職場を離れる行為は職務専念義務違反に問われることになります。

■就業規則の変更、認められる可能性

では、相談のケースのように休憩時間以外の喫煙を会社が禁止することが法的に可能なのでしょうか。勤務時間中の喫煙を禁止するのであれば、その旨を就業規則に書き込む必要があります。となると、就業規則の不利益変更に当たる可能性もあり、労働契約法上、この変更に合理性が求められることになりますが、勤務時間中の喫煙離席を長年にわたり労使で黙認してきたような慣行が認められない限り、変更の合理性は十分に認められると思います。

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