「朝一番で会社に行くと、出社していた社長の部屋に飛び込み、『柳井さん、見えました。フリースです。原宿はフリースでやらせてください』と訴えました。いろいろ議論した結果、柳井さんは『じゃあフリースでいくか』と決めてくれました。今でも鮮明に覚えています」
――社長就任の求めを断り、ファストリを2002年に退社。翌年、企業再生ファンドを立ち上げます。
「キアコンという会社を立ち上げました。でもファンドはやっぱりお金のために働くので。『自分はお金をマネージできる男ではないな』と思い、ファンドはたたみました。次に、自分たちの資金だけで、いろんな会社を元気にしようと、企業支援会社のリヴァンプを2005年に設立しました。うまくいった案件もあるし、そうでなかった会社もあるし、ずいぶん痛い目に遭いましたが、ありがたいことにリヴァンプは非常にいい会社になりました」
「収益も順調に上がっていたので、リヴァンプにとどまっていてもよかったのですが、『何かやんちゃなことをしたいな』と思い始めて。そうしたら、伊藤忠から声がかかったのです。伊藤忠が筆頭株主の旧ファミマが旧サークルKサンクスと統合、巨大な会社になるので、『その経営を任せられるのはおまえしかいない』って。家出した息子が親に呼び戻されるような感覚です。『20年たってようやく分かったか』って。すごく生意気なんですけど、そう思いました」
■チャレンジさせてもらえて、すごくありがたい
――コンビニエンスストア3位と4位を統合した新生ファミリーマートの社長となるのに不安はありませんでしたか。
「全くなかったですね。命を取られるわけではないので。むしろ楽しみたいというか。こんな歳になってまだチャレンジさせていただけるなんて、すごくありがたいですよね。社長に就任してちょうど2年ですが、手応えは感じています。素晴らしい社員もそろっているし、大きく動き始めた気がします」
――これから挑戦したいことは何ですか。
「ファミマの社長としては、社員が生き生きと働いて、社員中心でどんどん成長する会社になってほしいです。そのリードをできればうれしいですね。個人としては、くたばるまで仕事をしたいですね。ぶっ倒れるまで。まだまだ全然途中ですね。まだ屈伸運動をしたくらい。『これから走るぞ』って感じです」
1981年上智大理工卒、伊藤忠商事入社。97年ファーストリテイリング入社、98年副社長。02年にファストリを退社後、企業再生ファンドや企業支援会社を設立。16年5月ファミリーマート取締役、9月から現職。
聞き手/平片均也 撮影/筒井義昭