停電の備えにも 使えるアウトドアランタン4選
災害時に起こる可能性が高く、不便なのが停電だ。とりあえず明かりが欲しい場合には、スマホのライトで代用することもできるが、長時間の停電の場合には据え置き型の明かりが欲しくなる。キャンプで使用するランタンは、LEDを使用するものから液体燃料を使用するものまで様々な種類があり、明るさなども様々だ。災害時にも使える、アウトドアランタンを種類別に紹介したい。
手軽で安全なLEDランタン
LEDランタンは、主に乾電池やリチウムイオンバッテリーを使用し、発熱も少なく安全なランタン。キャンプをしない人でも防災のために1つ備えておきたいアイテムだ。その中でも、「LUMENA2」(税抜き1万4800円)は、10000mAhのバッテリーを搭載し、最大1500ルーメンの明るさで一時的に水没しても大丈夫なIP67の防じん防水性能を持つ。最大輝度で8時間、最小輝度(100ルーメン)で100時間と長時間使用できるのも心強い。
吊り下げ用のフックのほか、底面に三脚穴が設けられているので、三脚やスタンドに取り付けることも可能。280gの重量はややずっしり感もあるが、バッテリー容量と明るさを考慮すると軽量コンパクトといえる。さらに、10000mAhの大容量を生かしてモバイルバッテリーとしても使用できる。最大5V 2.4Aを機器に適した出力で充電。iPhone 8であれば約3.6回の充電が可能という。
もっと小型軽量のLEDランタンは各社から出ているが、三脚穴があることで吊り下げひもがない場所でも三脚を使用して高さを稼ぐことができ、モバイル機器の充電用としても使える点は評価が高い。4段階の明るさ、5700K(昼光色)、4500K(昼白色)、3000K(電球色)の色温度の調光が行えるので、雰囲気に合わせた色合いにしたり、カメラ用の照明として利用したりするなど、アウトドア、災害時だけでなく普段用途としても幅広く使える。
災害時はもとより、キャンプなどでもテントやバンガローなどの屋内でも安全に使用できるLEDランタンは、使う場所を選ばずに明るさを提供してくれるだろう。
家庭用ガス缶が使用できるランタン
キャンプ用のランタンは、LEDランタンが明るさや手軽さで勢いを伸ばしてきているが、ガスランタンも主流の座を譲らない。ガスを燃やすため、取り扱いにはやや注意が必要だが、明るさだけでなく冬場は暖かさも提供してくれる。
ガスランタンの主流はOD缶(キャンプ用ガス缶)を使用するもので、安定感もあるがキャンプになじみのない人には備えのハードルが高い。SOTOの「レギュレーターランタン ST-260」(税抜き5800円)は、家庭用カセットこんろで使用するガス缶(CB缶)を使用するためキャンプ用としては経済的で、防災用としてはガス缶がコンロと共用できるため汎用性が高い。同社の製品特徴であるマイクロレギュレーターが、低温時にも安定した燃焼効率を実現する。ホヤが金属メッシュ製で破損の心配が少ないのも評価できるポイントだ。
燃料式のランタンを使うときの最初のハードルがマントルだ。マントルはランタンには欠かせないパーツのひとつで、白熱電球でいえばフィラメントのようなもの。マントルの内部にガスや霧状の燃料を噴霧して燃焼させるとマントルが発光する仕組みだ。
ランタンを使い始める儀式としてマントルの「空焼き」がある。マントルは綿で作られた網状の袋(筒型もある)で、化学薬品が染み込ませてある。これをライターなどで綿を焼くことで化学物質が灰状に固まる(灰化)。この工程が「空焼き」だ。空焼きによって灰化したマントルはもろくなっており、指で触ったり衝撃を加えると穴が開いたり崩れてしまうことがあるので、ホヤの取り付けや運搬時などは注意が必要。
マントルの空焼きはやや手間だが、1、2回練習して取り付け方、空焼きまでを経験しておくとその後は難なく使用することができる。灰化したマントルが壊れやすい、空焼きが難しいという初心者向けの記述が、マントル方式のランタンから距離を置く結果になってしまっているが、数回の練習で慣れる。むしろ、一回失敗したくらいが取り扱いのコツを知るためにも良い経験となることだろう。実際誰もが一回はうっかり触って崩してしまうものだ。運搬も、ケースに収納して強い衝撃が加わらないよう注意すれば問題ない。実際、リュックサックに入れて長時間歩くなど試してみたが、その程度では壊れなかった。
慣れれば空焼きの儀式も楽しく感じるので、興味のある人はぜひ試してもらいたい。
基本的にはテントや室内での使用は禁止されているものなので、使用する際は注意したい。特に、震災直後などガス漏れが疑われる場所では、安全を確認できるまで使用しないほうがよいだろう。
揺らぐ火がリラックスさせてくれる灯油ランタン
ガスランタンや、場合によってはLEDランタンよりも明るさの面では劣ってしまうが、その明かりを眺めているだけで気分が安らぐのが灯油ランタンだ。ハリケーンランタンともいわれ、灯油やパラフィンオイルなどを芯で吸い上げて燃焼させる、アルコールランプの大型版といったものだ。映画などでも登場するので見慣れている人も多いだろう。
代表的なメーカーとして、ドイツのフュアーハンド、アメリカのデイツなどがある。フュアーハンドの「フュアーハンド ベイビースペシャル276 ジンク」(税抜き3600円)は、亜鉛メッキ処理されたシンプルなモデル。フュアーハンド社は、1893年に設立され、ドイツ軍など各国の軍用ランタンとして採用された実績も持つ質実剛健さを備えたランタンだ。
灯油を使用するのが基本だが、普段使いではパラフィンオイルを使用すると、ススや臭いも少なく、手入れも簡単だ。揮発性が低く、引火点も灯油と比べて高いので比較的安全なのも良い。10W前後の明るさで20時間以上の燃焼時間が得られるので、災害時では重宝することだろう。
まだまだ現役なキャンドルランタン
かつて防災用の明かりといえばろうそくだったが、火事の危険性や明るさ不足から、いまではLEDランタンにその座を譲ってしまった。しかし、UCOの「キャンドルランタンキット」(税抜き3900円)は、アウトドアでも災害時でも使用できる実力を秘めたキャンドルランタンだ。
明かりを拡散するリフレクターが、光量不足を補い、筒状の本体を収納するだけで消火される安全設計が特徴だ。キャンドルホルダーにはスプリングが内蔵されており、最後まで使い切る工夫が施されている。約9時間燃焼するので、常夜灯代わりにも心強い。
スペアのキャンドルには、煙が少なくアロマ効果のある「ビーズワックス(蜜ろう)」や虫よけ効果のある「シトロネラ」などのバリエーションもあるので、夏の屋外などでの虫よけ用、災害時のストレス対策などにも使えるだろう。
(ライター 戸津弘貴)
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