ソフトクリームの巨人、日世 中国攻略はドリアン味で

2018/11/18

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東京・浅草にある明治35年創業の和菓子の老舗、舟和本店。名物はサツマイモの甘さを閉じ込めた「芋ようかん」です。ここでは「芋ようかん」味のソフトクリームも販売しています。今、こうした老舗が看板商品の味をソフトクリームにして、あちこちで人気を博しているのです。

舟和本店が販売する芋ようかん味のソフトクリーム
ソフトクリームを作る「フリーザー」も日世が舟和に提供

ソフトクリーム作りに欠かせないのが、クリームが出てくるフリーザーです。舟和で使われているのは日世(大阪府茨木市)という会社が作ったものです。芋ようかんソフトの原料は、ようかんに使うサツマイモをペースト状にしたものと、ソフトクリームの原液となる「ミックス」という商品。実はこのミックスも、さらにはソフトクリームを乗せるコーンも日世が作っているのです。

ソフトクリームの原液「ミックス」は取引先の要望に応じて味、濃さを調整

商業施設や道の駅、コンビニなど国内で年間5億個が消費されるソフトクリーム。そのトップメーカーが日本にソフトクリームを持ち込んだ日世です。日世の強みは、細かい要望に応えられるミックスにあります。主な原料は牛乳や脱脂粉乳、砂糖など5種類。取引先は作りたい味に合わせて味や濃さを細かく選択できます。年間でソフトクリーム2億5000万個分にのぼるミックスを出荷し、シェアは5割。取引先は2万社以上で、これまで手がけたご当地ソフトは800種類。2017年の売り上げは連結ベースで464億円に達しました。

日世の始まりは、戦後に興された貿易会社でした。アメリカで人気のソフトクリームを日本で売れないかと、フリーザーとコーンを輸入し、大阪の百貨店で販売してみたところ大好評。瞬く間に全国に広まり、ブームを起こしました。さらに、1970年に開催された大阪万博では、自社生産したフリーザー110台を設置。ソフトクリームをなめながらパビリオンを巡る人が続出し、それまではみられなかった食べ歩きというスタイルを定着させました。

中国はソフトクリームブーム。日世は中国人に好まれる味を研究している

ところ変わって、中国では今ソフトクリームブームの真っただ中。日世は 2017年11月に現地工場を立ち上げました。「日本の高品質ソフトクリームを、中国の消費者に食べてもらうことが基本戦略」と日世を率いる岡山宏社長は語ります。中国人の好みに合わせた味も研究し、岡山社長も現地スタッフにまじり、試食を繰り返してきました。中国のドリアンブームを受け、なんと作ったのはドリアンソフトクリーム。中国での売り上げは130億円に達し、新たなソフトクリーム文化を根付かせようとしています。

※この映像と記事は「カンブリア宮殿」(9月6日放送)の内容を配信用に再構成したものです。(C)テレビ東京

[PlusParavi(プラスパラビ) 2018年10月22日付記事を再構成]

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