(1)横抱きで飲ませる
2歳までの子どもは、基本的には横抱きで飲ませています。薬を喜んで飲んでくれる子ならば、縦抱きでもうまく飲んでくれますが、服薬を嫌がる子では、縦抱きにすると、口の中に入れたあと、口を開けて薬を出します。
実際、縦抱きにすると、口を開いただけで、薬がこぼれます(写真2A)。また、器用な子なら、うまく口に入れても出してしまいます。一方、横抱きにすると口がポケット状になって、なかなか出すことができません(写真2B)。

(2)手は固定する

当然ですが、私のような知らないおじさんに抱っこされ、スポイトを口に入れられようものなら、子どもは嫌がります。すると、スポイトがはじかれたり、薬がこぼれたりするので、抱っこする時の赤ちゃんの右手と脇の間に、私(投薬者)の体を入れて、赤ちゃんの右手を固定します。さらに、投薬者の左腕で赤ちゃんの左手を押さえて動けなくします(写真3)。こうすれば、多少動いても大丈夫です。
(3)薬は少しずつ飲ませる
また、薬をスポイトで一気に入れると、量が多いため吐き出す子がいます。スポイトの目盛で0.5mLずつ飲ませると、唾液をためない限り吐き出すことは困難です。「スポイトで薬を0.5mLずつ口に入れて、一度スポイトを口から出す」「10秒間待って再度スポイトを口の中に入れてまた0.5mL入れる」…という動作を繰り返します。
(4)泣かせた方が飲ませやすい?
横抱きにすると1歳くらいのお子さんはよく泣き出します。オロオロするお母さんがいますが、逆にこの時がチャンスです。泣いているお子さんの口は大きく開いているので、スポイトを入れやすいし、大声を出しているので、薬を少しずつ入れると自然と薬液が喉に入っていきます。大泣きをするお子さんも、服薬後、お母さんに抱っこしてもらうとすぐに泣き止みます。
重要なのは少しずつ飲ませることです。横抱きにして少量ずつ飲ませると子どもは薬を吐き出せません。この方法は1歳半くらいまで有効です。
これについて、ある産婦人科医から、「横抱きで飲ませるときに誤嚥したりむせたりしませんか?」と質問がありました。育児書などでもそれを考慮してか、縦抱き図が多いのだそうです。
実は私も最初は縦抱きで飲ませていたのですが、そうすると乳児でも舌を上手に使って口の横から飲ませた薬を出すことがありました。横抱きで飲ませてみると、意外とこぼさなかったため、今は横抱きで飲ませています。
ただし、確かにむせる心配はあるので、少しずつ飲ませる必要があります。大泣きして気管に薬が入らないか心配な場合などは、一度、縦抱きにして、落ち着いてから再度チャレンジするように伝えています。
この横抱きにしてスポイトで飲ませる方法が通用するのは1歳半までで、2歳以降になると通用しなくなります。2歳以降の子どもへの飲ませ方に関するお話は、また次の機会にしてみたいと思います。

[『極める!小児の服薬指導』(日経BP社)より再構成]