小児科門前の薬局で子どもの服薬指導に日々奮闘する薬剤師で、『極める!小児の服薬指導』(日経BP社)の著者でもある松本康弘さんが、子どもに薬を飲んでもらうための工夫を紹介します。明日から使える具体的なノウハウ満載です。
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薬局で薬の飲ませ方を長時間説明しても、心配そうな顔をして帰る保護者が結構います。こんなときは、自分の服薬指導がどれくらい役に立っているのか心配になります。
場合によっては、口頭で説明するよりも、保護者の前で実際に子どもに飲ませてあげることが、最も効果的な服薬指導のはずです。しかし、実際に薬局で薬を飲ませたことがある薬剤師は極めてまれです。

そこで、時間に余裕があるときに、自宅で子どもにうまく薬を飲ませられないと話す保護者を中心に、薬剤師による服薬支援を試みました(写真1)。
最初の投薬は、初めて内服薬が処方された6カ月の男の子でした。お母さんに飲ませ方を説明したのですが、今ひとつ、表情がさえません。そこで、意を決して、「薬局で飲ませましょうか?」と切り出すと、「お願いします」と即答でした。
お母さんに待合室のソファに座ってもらい、スポイトと小皿とコップに水を入れて持っていきました。散剤(粉薬)に水を加えて、スポイトで吸って準備万端。赤ちゃんを預かり、抱っこして、スポイトで少しずつ飲ませました。すると、嫌がることなく、吸うようにして飲んでくれました。
一度成功すると自信が付き、様々なお子さんに飲ませてみました。成功することが多いのですが、時には失敗もします。口に薬を入れても吐き出す子や、手でスポイトを払いのける子など様々です。無理矢理の飲ませたお子さん(もちろんお母さんの許可を得て)の中には、薬局に入ってくると、こちらをじっと見て警戒する子もいました。しかし、失敗しても、感謝されることはあっても、責められることはありませんでした。
現在まで400例近く試しましたが、1歳半くらいまでなら、まずスポイトで大丈夫です。飲ませるコツは、次の4点です。