2018/11/6

「まず実行して、修正する」 アリババ集団・木村良子さん

「(動画サイトで影響力のある)インフルエンサーが日本に行くので準備して」。インターネット通販大手、アリババ集団の日本法人で働く木村良子さん(35)に中国本社から急な連絡。その後、数日間で日本のホテルや観光地での撮影許可を取るなど段取りをし、無事に動画の生配信にこぎつけた。「日本ではじっくり練ったうえで計画を詰めるが、中国はまずやってみる。間違っていたら直せば良いという感じ。間違いや失敗が悪いこととの認識は薄い」

アリババで決済サービス「アリペイ」の日本展開を担当する木村良子さん

木村さんは現在、電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」の日本展開を担当。「アリペイ」を使う日本企業の開拓や訪日客向けキャンペーンの企画などを手掛ける。09年に日本国内の不動産関連業から転職して以降、購買サイトや旅行サイト、広報など様々な業務を経験。「仕事に一通り慣れても、どんどん新しいことが出てくる」

中国企業は競争が激しく、ドローン(小型無人機)のような新商材を扱っていた中小企業が急成長することがある一方で「大企業でも5年後は分からない」という危機感がある。スピードを重視するのはそのためで、社内のやりとりはメールよりも手軽なチャットが主だ。木村さんには1時間足らずの間に約100件もの着信があった。

スケジュール遅れがち・短期的な目線など課題も

リクルートキャリアの転職情報サイト「リクナビNEXT」編集長の藤井薫氏は「中国系企業の求人は18年は15年比で2倍以上になった」という。「17~18年はEV(電気自動車)向けの電池開発といった次世代技術に関する求人が新たに出ている。中国企業は成長に伴い、人材への投資を強化。今後も日本での採用は増える」とみている。

一方、中国企業のグローバル化が進み、様々な国のやり方が包括されることで日本人にも働きやすくなっている例もある。パソコン大手のレノボ・ジャパンで働く泰永真公子さん(37)は不動産業界の営業を経て、08年に入社。量販店への営業に奔走してきた。レノボは05年に米IBMのパソコン事業を買収して話題になったが、その後日本ではNECとも合弁会社を設立。「安い製品の印象が強かった」往時と比べ成長した。「今の社内には中国流の反省・振り返りの慣例がある一方、製品説明にIBMの手法を取り入れるなど緩やかな融合が進む」(泰永さん)という。

上海在住のコンサルタント、大亀浩介氏はスマートフォン決済の普及を例に「中国は新しいモノへの許容度や挑戦心が強い」と分析。また「職場での男女平等が社会的にも浸透、女性上司による厳しい指導も当たり前。公私の区別や業務範囲が明確な点は、むしろ欧米系の外資企業に近いのではないか」と話す。

とはいえ「バラ色」なことばかりではない。「スケジュールに遅れがちな傾向があり、中国企業相手には注意喚起を10回ほどする」(秋山さん)、「短期的な目線が強く、もう少し相手との長期的な関係を考えて物事を進めても良いのではないか」(木村さん)との声も。中国企業は「トップダウンの側面が強く、対応に追われる時は大変」(大亀氏)との指摘もある。

はね返す力こそ大切 ~取材を終えて~

中国系企業で働く女性の取材で感じたのは、自分で自身の人生を切り開いていく力の強さだ。面白そうだと思ったら、年齢や子供の有無に縛られず転職してみる。やったことがなくても新しい環境に飛び込んでみる。しなやかな生き方に学ぶことは多い。

空気を読むことが求められてハッキリ物を言えない、男性のプライドを傷付けないように気を使う、必要以上に女性が下手に出て笑顔を浮かべる。日本での働きにくさの一因となるこれらの光景。日本の女性はもっと自己主張をしてもいい。現状をはね返すパワーこそが大切なのだと思った。

東芝の家電部門が中国家電大手、美的集団の傘下に入ったり、富士通やNECが中国・レノボグループにパソコン事業を譲渡したりといった動きが続く。ある日突然、中国系企業で働くようになることは、日本国内に居ても起こりえることだ。今後はどこの国で働いていたとしても、一層グローバルな視座からの対応力が求められる。

(増田有莉)

[日本経済新聞朝刊2018年11月5日]

<訂正>6日に掲載した「日本人女性、中国企業で生き生き 個人の裁量大きく」の小見出しで「『まず実行して、修正する』 アリババ集団・中村良子さん」とあるのは、「『まず実行して、修正する』 アリババ集団・木村良子さん」の誤りでした。本文は訂正済みです。