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南極に四角すぎる氷山発見 どうやってできた?

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/11/10

ナショナルジオグラフィック日本版

NASAの観測機「アイスブリッジ」から撮影。右に見えるテーブル型の氷山が、ラーセンC棚氷のすぐ近くで海氷の中に浮かんでいる。氷山は角が鋭いままで表面が平らなことから、おそらく棚氷から分離したばかりとみられる。(PHOTOGRAPH BY NASA ICE)

南極海に完璧な直方体の氷山が見つかった。2018年10月17日に米航空宇宙局(NASA)が紹介したものだ。南極半島の東海岸付近の海に横たわっている。まるで水に浮かべた巨大な豆腐のようだ。

この氷山は、NASAの航空機が定期的に行っている観測の中で発見された。NASAの研究ミッション「オペレーション・アイスブリッジ」は、極地が地球の気候に与える影響を解明することを目指して、調査用の航空機を何機も使って定期的に情報を収集している。

NASAは「氷山の角が鋭いままで、表面が平らであることから、おそらく棚氷(たなごおり)から最近分離したものと考えられる」とツイートし、ラーセンC棚氷のそばだったことにも触れている。「棚氷」とは、陸の氷河や氷床が海に押し出されたものだ。

米コロラド大学ボルダー校の上席科学研究員、テッド・スカンボス氏は、この氷山は長さ2~3キロ、高さ40メートルほどだろうと話す。

「この氷山に含まれる大量の氷を合わせれば、カリフォルニア中の全ての水泳プールを何度も満杯にできるでしょう」とスカンボス氏は言い、南極大陸の氷塊に比べればごくごく小さいとも指摘した。

■実は珍しくないテーブル状の氷山

「棚氷は割れ目や亀裂だらけです」と説明するのは、米ニューヨーク州立大学バッファロー校の地球物理学者クリスティン・ポイナー氏だ。今回のように平坦なテーブル状の氷山は、想像するほど珍しくはないという。

「(氷山は)遠くから見れば、この写真のように美しい純白に見えますが、少し近づけば傷だらけで、ひびがたくさん入っています」。

「ラーセンC棚氷は大きな棚氷です。長い時間をかけて氷が広がり、まっ平らになっています」とポイナー氏は付け加えた。巨大な棚氷にすでにできていた直線的な亀裂に沿って氷山が分離した結果、大きく平らな長方形になったと見られる。氷山のうち、水面上に見えているのは通常わずか10%ほど。分離した時、この氷山は下面も滑らかで平らだったかもしれないが、海流によってすぐに形が変わったはずだ。

NASAジェット推進研究所の科学研究員で、米カリフォルニア大学アーバイン校教授のエリック・リノー氏も、これほどの長方形になったのはラーセンC棚氷の巨大さによるものという点に同意する。

「ラーセンC棚氷から分離する氷山は非常に大きく、完全な長方形か、直線的な形に見えます。棚氷を数百キロも真っすぐに走る亀裂から分離しているためです」とリノー氏。「このような長方形の氷山は、グリーンランドではあまり見つかりません。南極よりも気温が高いので、氷山は割れて小さくなりますし、氷河も南極よりは小さいからです」

■溶けてゆく南極大陸

棚氷は、大陸とつながったまま海にせり出した巨大な氷塊だ。なかでも今、変化が注目されているのが、南極半島にあるラーセンC棚氷だ。近くにあったラーセンA棚氷は1995年、ラーセンB棚氷は2002年に崩壊した。

2017年、米デラウェア州の面積ほどの氷山がラーセンCから分離した。1兆トンとされるその氷塊は、過去記録された中で最大級だった。ラーセンCからさらに多くの氷が分離すれば、棚氷が今より不安定になる。科学者たちは、この分離がラーセンAとBで見られたような崩壊を新たに引き起こすのではないかと不安視している。

ラーセンC棚氷以外にも、気候科学者は多くの対象の観察を続けている。気候変動によって極地の気温が上がり続ける中、「南極が溶けている」という科学者たちの懸念はますます大きくなっている。

ポイナー氏は、「1つの氷山が、必ずしも棚氷の安定度を示すとは限りません」と指摘する。

「棚氷は銀行口座のようなものです」とポイナー氏。棚氷からしばしば氷山が分離するが、降雪によって補われてもいくから、という。

(文 SARAH GIBBENS、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年10月28日付]

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