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かかわると面倒くさい人

場を凍らせても気づかない 自己チュー人間の行動様式 タイプ3・自己中心的で相手の心に関心がない

2018/11/6

文化人類学者ホールは、意思の疎通を言葉に頼る文化と言葉に頼らない文化があることを指摘し、文脈度(コンテクスト度)という概念を提唱している。

文脈度の低い文化とは、人々の間に共通の文化的文脈がなく、言葉ではっきり言わないと通じ合えない文化のことである。欧米のような言葉ではっきり伝えるコミュニケーションは、文脈度が低い文化の特徴と言える。

一方、文脈度の高い文化とは、人々が共通の文化的文脈をもち、わざわざ言葉で言わなくても通じ合う文化のことである。日本のようなはっきり言葉に出さないコミュニケーションは、文脈度の高い文化の特徴ということになる。

遠回しな言い方、以心伝心、暗黙の了解、察し合いなどと言われる、言葉にしない思いまでをも汲み取ろうとする日本特有のコミュニケーションを可能にしているのが、共感性の高さである。

遠回しな言い方で断ろうとする。賛成できなくてもはっきりと反対しない。はっきり言わずに汲み取ってほしいと思う。相手の期待や要求を察して先回りして動く。これらは文脈度の低いコミュニケーションを用いる欧米人などにはまったく意味不明のはずだ。一方、私たち日本人にとってはごくふつうのことと言える。

文脈度の高いコミュニケーションに幼い頃から馴染んでいるせいで、私たち日本人の共感性は磨かれるのである。

■「鈍感」は自分の欲求充足しか考えてないから

ただし、生活や文化の欧米化により、このところ文脈度の高いコミュニケーションにうまく適応できない若者も増えてきている。そこで、本人は言われた通りにきちんとやっているつもりなのだが、言外の意図が通じず、周囲をイラッとさせるというようなことがしばしば起こる。

「みんなが言う常識っていうのが、私にはよくわからないんです」

「みんなが、それってちょっと違うよなあ、って言う、そのちょっと違うっていうのは、どう違うのか、そこがわからないんです」

などと学生から相談を受けることもあるが、このように察しが悪く、空気も行間も読めない人物にいちいち言葉で説明するのは至難の業である。

このような事例には、発達障害が絡んでいることもあるが、その場合は本人はいたって真剣だったりするため、周囲はイライラしながらも極力ていねいに対応するはずだ。

周囲をイラッとさせ、呆れさせるのは、他人に対する無関心が原因になっている自己チューな察しの悪さを中核にもつ人物の場合だ。

自分のことしか眼中になく、相手の様子に関心を向けたり、相手が何を求めているのか、どんな思いでいるかなどに想像力を働かせたりする心の習慣がないため、察しが悪く、空気も行間も読めないのである。

それには、自己中心の文化の影響が顕著にみられる。

すべての言動は自分の欲求充足を志向しており、相手の欲求充足などは眼中にない。ゆえに、言いたいことを言ってスッキリするだけ。相手がどんな気持ちになろうが、周囲がどんな反応を示そうが、まったく気にならない。どんなに呆れていても、どんなにうんざりしていても、お構いなしにしゃべり続ける。

そうした鈍感力は、周囲の人たちにとっては迷惑以外の何物でもなく、本人が鈍感で悪気がないだけに、どうにも面倒くさい相手なのである。

榎本博明
心理学博士。MP人間科学研究所代表。
1955年東京生まれ。東大卒業後、東芝勤務をへて都立大大学院心理学専攻博士課程中退。大阪大学大学院助教授などをへて現職。著書に「『上から目線』の構造」など。

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かかわると面倒くさい人 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 榎本 博明
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)

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