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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。このところ金融政策をめぐる新刊が相次いで刊行されて、金融街大手町の書店らしい活気がみなぎる。そんな中、一番の売れ行きをみせていたのは、前日銀総裁が自らの軌跡を振り返りながら中央銀行の本質を考察した大部の一冊だった。

700ページ超の大著

その本は白川方明『中央銀行』(東洋経済新報社)。副題に「セントラルバンカーの経験した39年」とある通り、黒田東彦・現総裁の前任で2008年から13年まで日銀総裁を務めた著者が日銀マンとして過ごした39年を振り返り、中央銀行のあり方について思索をめぐらせた内容だ。総ページ数は700ページを超え、本体価格4500円。手に取るのも気後れする厚さで値も張るが、ここ大手町では堂々のベストセラーだ。退任後5年間沈黙を続けていたこともあってアベノミクスに陰りも見えるこの時期、金融街の関心を集める。

全体は3部に分かれる。こうした本は在任期間の回顧録という体裁になりやすいが、大学での経済学との出合いから書き起こし、第1部は「日本銀行でのキャリア形成期」に当てられる。ここまでが212ページ。第2部が「総裁時代」で、リーマン危機、東日本大震災を含む激動の5年間の自らの政策決定を400ページ近く費やして語る。最後の第3部は「中央銀行の使命」と題する中央銀行論だ。

体験に沿って政策判断たどる

ページを開いてみると、意外なほど読みやすい。ひとつには自身の職務体験を語っているので、回顧録的に読めるからだろう。回顧録として背骨を通したうえで、そこに入行直前のニクソン・ショック、石油ショック後の狂乱物価、課長時代のバブル経済への対応など、同時代を生きた人なら肌感覚でわかる歴史を重ね合わせ、さらにそこからその時々の政策判断の思考過程を分析的にひもといていく。「できるだけ多くの人に中央銀行にも関心を持ってもらいたい」という執筆動機がこうした平易な語り口を支えている。

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