エメラルドの海と奇岩が織りなす世界遺産 ハロン湾
ベトナムは自然豊かな国だ。なかでもユネスコの世界遺産に登録されているハロン湾は特別だ。その壮大な景観を映像でお届けしよう。
ハロン湾はベトナム北東部クアンニン省に位置し、広大なトンキン湾の一部だ。ユネスコの説明によれば、エメラルドを連想させる緑色の海に大小1600以上の島が浮かび、その大部分が無人島だという。
「ハロン」はベトナム語で「降下する竜」の意。竜はベトナム文化では重要な存在で、竜にまつわる言い伝えは事欠かない。よく知られているのが、竜の親子が天から降りてきて、ベトナムの人々を侵略者から守り、炎とともにエメラルドやヒスイを吐き出したというもの。竜の親子はそのまま地上にとどまったという。
伝承によれば、竜が吐き出したエメラルドやヒスイは高くそびえ立つ石灰岩の構造物になり、長い年月を経て無数のゴツゴツした岩山に分かれていったという。
米カリフォルニア大学バークレー校の講師で、南アジアと東南アジアを研究するハン・トラン氏は「こうした伝承は、ベトナムの信仰や歴史から来たものです」と話す。「まず、侵入者と戦ってきた歴史があります。そして、竜の父(ラクロンクァン)と妖精の母(オウコー)を先祖に持つベトナム人は、たとえ戦争になっても、目に見えない神聖な力が守ってくれると信じていることです」
言うまでもなく、ハロン湾の魅力は伝承が物語る世界だけではない。米ホフストラ大学の教授で、地質、環境、持続可能性を専門とするロバート・ブリンクマン氏は、科学的な観点からその魅力を説明する。「ハロン湾は、とても珍しいカルスト地形として注目されています」。タワー状のカルスト地形は米フロリダ州やプエルトリコなど、陸上のものはたくさんあるが、海上ではあまり見られない光景だからだ。
ブリンクマン氏は続ける。「もちろん地質学者だけでなく、ほかの科学者やアーティストもハロン湾のタワー状のカルスト地形に引きつけられます。もっとハロン湾のことを知りたいと思わせる美しい風景は、ここにしかない特別なものなのです」
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年10月13日付記事を再構成]
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