ライフコラム

子どもの学び

どうして年を取ると白髪ができるの?

2018/11/12

スーちゃん お母さんが鏡をみて「最近、白髪(しらが)が増えた」と言っていた。そういえば、おじいちゃんやおばあちゃんの髪(かみ)の毛は真っ白だな。私の髪の毛は色が濃(こ)いのに、どうしてこんなに違(ちが)ってくるんだろう。私も大人になったら白くなるのかな。

■黒い色素を作る細胞が減るからだよ

森羅万象博士より 髪の色が濃いのは、「メラニン」という色素が髪の毛の中にあるからなんだ。若(わか)い人の毛髪には、メラニンがたくさんある。それが年を取ってくると、だんだん少なくなって髪の色が白くなるんだ。メラニンは肌(はだ)にもあって、日焼けで肌が黒っぽくなるのにも関係しているよ。

世界中の人をみると、髪の色には黒だけでなく、茶や金などいろんな色があるよね。この違いにメラニンがかかわっている。メラニンには黒っぽい色と黄色に近いものの2種類がある。髪に含まれる2種類の割合(わりあい)は人によって違う。日本に多い黒髪の人は、黒っぽい色のメラニンが多いからなんだ。

どうして年を取るとメラニンは少なくなっていくんだろう。それは髪の毛のできる仕組みと関係しているんだ。

髪の毛はたんぱく質でできている。髪の毛の根もとの皮ふの下には「毛包(もうほう)」という部分があって、ここで髪の毛が作られる。この毛包の中に髪の毛を作る細胞(さいぼう)や、メラニンを作る「色素細胞」などが入っているんだ。

髪の毛は1カ月で約1センチメートルのび、3~6年成長すると、やがて抜(ぬ)ける。健康な人でも1日に100本くらい抜けるよ。抜けるときには、髪の毛を作る細胞や色素細胞も毛穴(けあな)からなくなる。すると、毛穴の周りにある新たに髪の毛を作る細胞や色素細胞の元になる細胞が、毛根に向かって移動する。これが新しい色素細胞などになるんだ。

若い人は色素細胞の元になる細胞が多い。だからたくさん色素細胞ができて、濃い色の髪の毛が生えるんだ。でも年をとると、色素細胞の元になる細胞が少なくなって、色素細胞も減ってしまう。そうするとメラニンの量が減って白っぽい髪が生えてくるんだよ。

じゃあどうして年を取ると、色素細胞の元になる細胞は少なくなるんだろう。その原因は体の作り方をまとめた設計図の役割(やくわり)をする「遺伝子(いでんし)」にあるんだ。色素細胞の元になる細胞は2つに分かれる分裂(ぶんれつ)をくり返して数を増やすけど、遺伝子に傷(きず)がつくと、この細胞が分裂できなくなることがあるんだ。そうすると、やがて細胞自体がなくなってしまうよ。

遺伝子が傷つく原因はいくつかある。大きいのは、年をとるにつれて細胞が今までに分裂した回数が増えて、傷ができやすくなることだ。これ以外の影響(えいきょう)も指摘(してき)されていて、例えば、喫煙(きつえん)が影響するといわれている。睡眠(すいみん)不足やかたよった食生活など生活習慣が悪いことや、糖尿病(とうにょうびょう)みたいな病気でも影響を受けやすくなるという説があるよ。ただ、くわしい影響はまだよく分かっていないんだ。

若くても白髪になることはある。病気などが原因で、細胞が働かなくなってしまうことがあるんだ。でもしばらくして色素細胞の元になる細胞の働きが戻(もど)ると、また色のついた髪が生えてくるよ。親が若い時から白髪だからといって、子どももそうなるとは限らない。親から引きつぐ特定の遺伝子が関わっているかは、まだ分かっていないんだ。

海藻(かいそう)を食べれば髪が黒くなるという話を聞いたことがあるかもしれない。だけど、特定の食べ物で黒くなるものはまだ見つかっていないんだ。白髪を気にして抜いている人もいるかもしれないけど、色素細胞がなければ黒い髪は生えてこないよ。

白髪を染(そ)めてかくそうとする人もいるね。こうした白髪染めというものには2種類の方法があるよ。1つは髪の毛の表面を少し開いて、黒や茶などの色素を髪の内側の深くまでしみこませる方法だ。色が長持ちするけど、髪を傷つけやすいんだ。もう1つは髪の表面だけを染める方法で、色は長続きしないけど髪をいためにくいよ。

もし、色素細胞の元になる細胞が減るのを食い止めたり、働きを高めたりすることができれば、白髪になるのを防げるかもしれない。ただ今のところ、そうした薬はまだ開発されていないんだ。

■抜け毛にも幹細胞が関与

博士からひとこと 白髪以外にも加齢(かれい)によって起こる髪の変化には抜け毛がある。抜け毛にも細胞をつくる元になる細胞「幹細胞」が関係する。若いころは「毛包幹細胞」がたくさんあり、ここからすぐに新しい髪の毛を作る細胞ができる。だが加齢とともに毛包幹細胞は少なくなり、髪の毛が作られなくなる。老人性脱毛症(だつもうしょう)といわれるもので、60歳くらいから毛包幹細胞は少なくなるとされている。20代から進行する男性型脱毛症や、40代くらいから女性に起こる女性型脱毛症はホルモンなど別の原因で起こる。
老人性脱毛症の有効な治療薬(ちりょうやく)はまだない。毛包幹細胞の働きを高めたり、毛包幹細胞の足場となるたんぱく質を増やしたりして、髪の毛を減りにくくする研究が進んでいる。さらに、細胞を作り出す再生医療(いりょう)を目指した取り組みもある。理化学研究所などは皮ふの細胞から毛包を大量に作る技術を開発した。ただ、まだ基礎(きそ)研究の段階だ。

(東京医科歯科大学の西村栄美教授に取材しました)

[日本経済新聞夕刊2018年10月27日付]

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL