Wi-Fi内蔵の目覚まし時計 予定管理や見守りにも対応
独自の発想でデジタルとアナログをつなぐ製品を次々と発表するキングジムが、スマートプログラムアラーム「Link Time」(1万3200円)を2018年10月26日に発売した。Link Timeは、無線LAN対応の目覚まし時計だ。最大のウリはスマートフォン(スマホ)やパソコンから、細かくアラームを設定できること。スケジュールアプリに細かく予定を登録する感覚でアラームの設定ができる。
例えば、絶対に起きなければならない日に、5分おきにアラームを鳴らしたり、1年先の大事なスケジュールに遅刻しないように早めに設定しておくなど、日によって違う時間にアラームを設定することがラクに行える。確認もスケジュール管理アプリ同様、月、週、日で表示できるから間違えない。ここまで細かく設定できる目覚まし時計ならスマホのアラームよりも使えそうだ。特に、毎日起きる時間が異なる人にはとても役立つ。
細かく設定できるアラーム機能
アラーム機能も単にアラーム音を鳴らすだけではない。録音した音声をアラーム音として使えるのをはじめ、文字入力したテキストの読み上げ、Googleカレンダーの今日の予定、明日の予定の読み上げ、今日の天気、明日の天気の読み上げも、アラームとして利用可能だ。
また、アラームオフ時に予定や天気などを読み上げてくれるように設定することもできる。これが意外と便利で、目覚ましで起床し、アラームを止めると、その日の天気予報が聞けるというのは、何とも効率的。一日が始まることを実感できる。ただし、ボイスメモをアラームに設定する場合、アラーム継続を時間でなく回数で1回、または2回に設定しないと、同じ言葉が何度も繰り返されて、ちょっとうっとうしい。このあたりも好みで細かく設定できるわけだ。
アラームが鳴っていないときに、本体上部のスヌーズボタンを押したときの挙動を設定できるのも面白い。今日や明日の予定、天気予報を設定できるが、ポンと時計の上部を押すだけで予定や天気予報が聞けるのは、スマホで確かめたり、スマートスピーカーに聞くよりも速くて、ミスもない。
「指定した時間以降は明日の予定(天気予報)を読み上げる」という設定も可能。このあたりの細かさは、実際に使いながら製品を作り込んだことがうかがえて好感が持てる。
見守りや共有機能、伝言メモなど多彩な機能
一般的な目覚まし以外の使い方として、アラームをオフにしたり、自動停止したときにメールやプッシュで通知する機能があり、遠くに住む両親などの見守りに使うことも可能だ。アラームオフ履歴の確認もできる。
また、共有機能を使って、1台のLink Timeを複数人で共有すれば、子供のアラーム設定し忘れを防いだり、伝言メモとして使うこともできるわけだ。
ただし、これら機能はスマホでも可能。実際にスマホを目覚まし代わりに使っている人はとても多い。それについてはキングジムでも理解している。製品発表会でも、「充電し忘れてアラームが鳴らない、ベッドサイドに置き忘れる、つい遊んでしまって寝不足になってしまう」など、スマホを目覚まし代わりに使うデメリットを挙げていた。
私が実際にLink Timeを使って感じたのは、ふと目を覚ましたときに、スマホを手に取らなくても首を動かすだけで時間を確認できることや、物理的にボタンを押すことでアラームを止めるときの「止めた」感など、スマホにはない据え置き型の目覚まし時計ならではのメリットがあること。
寝る前に設定する必要がないので、アラームのかけ忘れがないこと、スマホの画面からワンタッチでアラーム予約のオフができることなども、個人的には快適だった。
実際に使っていると、従来の目覚まし時計やスマホによるアラームの欠点を解消、それぞれの利点などをうまく生かした、かなり実用的な目覚まし時計だということがよく分かる。
そして、設定が細か過ぎて使いにくくならないように、アプリの操作性も工夫されている。リピートと例外設定の操作が直感的にできる。目覚まし時計にそんなに細かい設定が必要なのかという気もしたが、それは単にこれまでの目覚まし時計が大まかだっただけで、アラームの設定は細やかなほうが生活に合った操作が行えることも、Link Timeで気がついた。
ネットワークに対応した目覚まし時計という製品の方向性は多分、間違っていない。ネットワークにつながないスタンドアローンの製品にこだわってきたキングジムのデジタル文具シリーズの中で、遂に登場した本格的なネットワーク対応製品だが、とてもキングジムらしい製品に仕上がっている。
欠点もあるが、可能性も大きい
ただし、使っていてとても困る欠点も現時点では残っている。電源がAC電源のみというのが厳しい。近くにコンセントがないと使えない、他の場所に持ち出すのが面倒くさい、というのは大きな欠点だ。また、比較的、家の隅にあることが多い寝室のベッドサイドは、無線LANの電波が届きにくいケースがある。それは仕方ないとしても、やはり目覚まし時計は電池で動いてほしいのだ。
電流と電圧のスペックを見ると、ケーブルさえ用意すればモバイルバッテリーからのUSB給電でも動きそうだが、それは保証外ということになる。基本的に一年中動いていてほしいアイテムなので、メーカー保証外の使い方はしにくい。例えば、スヌーズボタンプッシュで天気予報やスケジュールを読み上げてくれる機能は、デスクサイドやリビングにあってこそ生きる。
また、音声読み上げ機能を使って、スマートスピーカーに指示を出すこともできるのだが(グーグルのGoogle Home、アマゾンのEcho Dotで実証済み)、そういった使い方もベッドサイドでは使いにくい。寝てから起きるまではベッドサイドで、日中はリビングといった使い方をしたくても、AC電源のみだとどうしても機動性が悪い。せっかくの機能が、それではもったいないと思うのだ。
近日中にスマートスピーカーからLink Timeの設定ができるようになるそうだし、多分、この製品はこれからの可能性を含めて評価すべき製品なのだろう。
使用して思うのは、目覚まし時計には、まだまだイノベーションの可能性があるということ。そして、まだまだハードウエアとしての「置き時計」は便利で存在価値があるということ。あらゆる可能性を見せてくれる製品として、Link Timeはとても面白い。
(ライター 納富廉邦)
[日経トレンディネット 2018年10月19日付の記事を再構成]
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