もう一つの柱が、リポートやプレゼンテーションの重視。同校はアジアの学校との交流に力を入れており、タイのプリンセス・チュラポーン・カレッジ・チェンライ(PCCCR)高校とは相互に生徒を送り合うほか、韓国や中国などからも生徒を受け入れている。そうした交流のたびにポスターを書いたり、プレゼンをしたりするため、「生徒たちは卒業するころには書くことが苦にならなくなる」。もともと大学や社会に出てから役立てる狙いだったが、「今後の入試改革では、これらの教育が生きるのではないか」と大野氏は期待する。

国立大付属校への厳しい視線

現地の高校との相互交流の一環でタイを訪問した生徒ら=学芸大付属高提供

矢継ぎ早の改革の背景には、難関大学への進学実績の長期的な低落傾向がある。同校の東大合格者数はここ数年、50人前後で推移し、最も多かった時期の半分程度にとどまる。都立高校に学区制が導入された1967年以降、90年代にかけては、日比谷高校などに進学できなくなった優秀な生徒が学芸大付属や筑波大付属、私立の開成、麻布といった中高一貫校に入り、進学実績を伸ばした経緯がある。

しかし、03年に学区制が廃止されてからは都立高の人気が復活。神奈川県の横浜翠嵐高校など受験対策を強化する公立高校も増え、学芸大付属高には逆風が吹く。さらに16年秋に発覚したいじめ問題の影響もあり、17年春には入学者が定員に満たないという異例の事態に追い込まれた。

とはいえ、進学指導を重視する方針に対しては、国立大付属校の設立趣旨からみて疑問を呈する声もある。文部科学省の有識者会議は17年8月、エリート校化している国立教員養成系大学・学部の付属学校は入学者選抜で学力試験を廃止または縮小し、多様な生徒を受け入れるべきだという報告書をまとめた。付属校には学力の高い生徒が集まる半面、教育や研究の成果が十分に公立学校に還元されていないとの指摘だ。

学芸大附属校が実施する公開教育研究会や随時引き受けている学校見学には、全国の高校から多数の教員が訪れる。「事後の調査では公立はもちろん、私立高校からも自校の改革に参考になったとの声をいただく」。国立大付属校が果たすべき本来の目的を追求しつつ、個々の生徒の進路希望をどう実現していくか。大野氏がけん引する学校改革の行方に注目が集まる。

(村上憲一)

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