常勤化のもう一つの狙いは、校長を中心とするガバナンスの強化だ。大学入試改革や学習指導要領の改訂など、高校教育を巡る環境は大きく変わろうとしており、すばやく対応できる組織をめざす。「この学校の先生はそれぞれの分野では優秀だが、学校全体として教育水準を高めていく取り組みが遅れていた」と大野氏は指摘する。

タフで優しいイノベーター人材を育成

城ケ島(神奈川県)での野外実習など自ら学ぶ機会を重視する=学芸大付属高提供

学校改革はまず、育てたい生徒像を明確にすることから始めた。従来の教育方針として「清純な、気品の高い人間」など3つの指針があったが、これを「イノベーターとして国際社会に貢献する、タフで優しい人間」と現状に沿うように再定義。具体的には、課題を発見し、自ら工夫して解決する力や、生涯にわたって学びに向かう力を養う。

そのうえで、生徒の進路希望の実現、すなわち進学指導の強化に力を入れる。1つ目は20年の大学入試改革をにらんだ英語力の向上だ。ベネッセコーポレーションが実施する英語4技能(読む・書く・話す・聞く)の検定試験であるGTECを全学年の生徒が受けるようにした。

2つ目は受験対策。これまでは学校内で作成した模擬テストで実力向上を図ってきた。しかし「一部の都立高や難関私立高が力を付けるなかで、客観的な評価に基づく指導が不可欠になっている」として、学習塾など外部の模擬テストも導入する。また、大学入試センター試験後の講習と個別指導も時間をかけて実施。「塾などに頼らず、現役で志望校に合格できる指導体制をつくる」

3つ目はキャリア教育と進路ガイダンスの充実だ。同校は脳科学者の茂木健一郎氏、東京エレクトロン取締役相談役の東哲郎氏ら、卒業生の顔ぶれは多彩。「そのネットワークは最大の資産であり、講演などで協力を得ていく」。特に医学部志望者向けには、卒業生の医師や医学部在学中の学生が講師となり、医師の仕事の実態ややりがい、入試対策などを話してもらうガイダンスも始めた。これは大野氏が戸山高時代に取り入れ、先駆的として注目された取り組みだ。

こうした改革と並行して、学芸大付属高が独自に進めてきた「本物教育」にも磨きをかける。その柱の一つが、1~2年生全員に必須の探究活動。生徒が自分でテーマを決め、資料を集めたり、実験したりして成果を発表する。「金魚すくいの上手なやり方など、ユニークな探究も多い」といい、理系文系にかかわらず、科学的な理解力を身に付けさせる。

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国立大付属校への厳しい視線