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ヒットを生む秘訣は要素の掛け算 『億男』の川村元気

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NIKKEI STYLE

日本映画の歴代興行収入2位となった『君の名は。』をはじめ、『告白』『悪人』『モテキ』など、数々の大ヒットを放ってきた映画プロデューサー・川村元気氏。同時にベストセラー作家の顔も持つ川村氏に、ヒット作を生む秘訣を聞いた。

川村氏は、2012年に『世界から猫が消えたなら』で小説家デビュー。140万部超えのベストセラーとなり、映画化もされてヒットした。この10月には小説第2作『億男』が大友啓史監督(『るろうに剣心』)のメガホンで映画化された。宝くじで当たった3億円が、無二の親友と消えてしまった男の物語だ。

「『世界から猫が消えたなら』は、映画や電話、時計などが消えていく話。その時に、『世界からお金が消えたなら』という章を書こうかな、と思ったんです。お金が消えたら、僕たちにとってお金がどういう存在なのか、相対的に分かってくるだろうなと思って。そしてお金について調べ始めたら、偉人たちの金言がたくさん出てきて、これがとても面白い。それに、映画業界にいると億万長者と時折出会うのですが、『この人たち、全然幸せそうじゃないな』と思うことが多くて気になっていたんです。それで、『お金だけで長編が書けるんじゃないか』と、1作目を書き終えてから取り組みました。

まず100人くらいの億万長者に取材したんですけど、その人たちの生き方や発言が、独特の価値観で面白かった。一晩で500万円使うようなお金持ちのパーティーに行ったり、怪しいマネーセミナーに参加したりもしました。お金の重さや大きさを測ったり、あえて1万円札を破いてみたりもしました。そうやって『お金と幸せって何だろう』と、自分なりにとことん考えて、答えを見つけるように書いていきました。

今回の映画化は、『寄生獣』(14年)でご一緒したROBOTの守屋(圭一郎)プロデューサーからお話をいただいて、大友監督も守屋さんからのご提案でした。僕は大友さんが演出したマネートレードを描いたドラマ『ハゲタカ』(07年)が大好きで、そこでお金について散々考えたであろう大友監督なら、この小説を映像化できるんじゃないかと思いました。

大友監督にお伝えしたのは、『マルサの女』(1987年)や『スラムドッグ$ミリオネア』(09年)みたいな活劇にしてほしいということ。完成した映画は冒頭からアグレッシブだし、キャラクターがみんな濃くて、かなり活劇になったと思います(笑)。キャストも素晴らしく、『映画はやっぱり俳優の肉体性だ』と改めて自分が映画を作る時の指標になりましたね。

常々小説では映画では表現できないことを書きたいと思っているので、自分ではどう映像化していいのか分からない。だから『世界から猫が消えたなら』も『億男』も映画化のときは信頼できる方にお任せしました。でも2作、原作者として関わることで『なるほど』と発見することもあり、次以降は、思い切って踏み込んでやってみるのもアリなのかなと思っています」

自分が見たいものを作る

父親は元日活の助監督。幼い頃から映画の英才教育を受けて育ち、フェリーニの『道』、ヒッチコックの『サイコ』など名作はカット割りまで覚えているという。大学卒業後、東宝入社。当初は劇場勤務だったが、社内の企画募集でチャンスをつかんでプロデューサーになった。

川村氏の企画は、物語、監督、キャスト、音楽などの掛け合わせが絶妙。例えば『君の名は。』では、コアなファンを持つアニメーション作家だった新海誠とメジャーエンタテインメントに挑み、ロックバンドのRADWIMPSを音楽に起用。さらに神木隆之介や長澤まさみらメジャーキャストを声優に迎えるという「要素の掛け算」で話題を最大化した。

「結局『自分が見たいものを作る』しかないんです。目に見えない『大衆』にインタビューはできない。だから、大衆の1人である自分がシネコンに行ったときに、あまたある映画の中からこの映画を見たいのか、という基準でシビアに考える。そうすると企画が自然と重層的に強化されていく。

もう、ワンテーマで通用する時代は終わったと思うんです。昔はみんなでお茶の間のテレビを見ていたけど、今はパソコンにスマホもあって、スマホの中ではLINEやツイッター、インスタグラムが開かれている。なおかつサファリのページレイヤーが、気づいたら20枚くらい開かれてたり(笑)。そういう複雑なレイヤーのなかでみんな生きているのに、映画がシンプルで通用するはずがない。だから多様な面白さを、ギリギリのバランスで組み合わせて、自分が見たいものを作っているんです」

 自分が見たいもの、あるいは読みたいものは、世間のそれとつながっている感覚があるという。

「世間というか、1人ひとりとどこかで同じことを思っている、感じていてほしいな、というところはあります。例えば『億男』は、僕自身がお金の正体を知りたいから書いた。でもそれは読む人も一緒で、僕が切実に知りたいことはみんなも知りたいことなんじゃないかと、どこかで信じています。

最近文庫にもなった『仕事。』という本で谷川俊太郎さんと対談したときに、谷川さんも同じことをおっしゃってたんですよ。谷川さんは詩も書くし、作詞もするし、絵本も書いて、どれも素晴らしい。どうしてそういうことができるのかと聞いたら、『僕は集合的無意識にアクセスしたいと思っているんです』と。『集合的無意識』っていうのは、多くの人が共有しているけれどもまだ顕在化していない欲求や感覚。僕も、まだ言語化されていないけど、みんなが心の底では言ってほしいことを物語にする、ということをやりたいんだと気づかされました。

僕の場合は、それを小説、映画、アニメーションなど、いろんな表現でやっているだけなんです。だから、『マルチ』とか言われると、どうもしっくりこない(笑)。やってることは1つで、言いたいことに合わせて表現を変えているだけなんです。ただ、いろんな人に出会いたいとは思います。多様な仕事をすると様々な人に出会えて、刺激を受けますから」

ハリウッドや中国での企画

17年はミュージックビデオ(※)、18年は短編映画『Duality』を撮るなど、最近は監督する機会も増えた。また今年は『映画ドラえもん のび太の宝島』で脚本家デビューして大ヒット。20年には東京五輪開閉会式の演出にも携わる。その才能は海外からも注目され、小説『世界から猫~』は世界15カ国で出版され、『億男』は中国で映画化が決定。『君の名は。』はハリウッドで実写化が進み、『スター・ウォーズ』の新シリーズ監督としても知られるJ・J・エイブラムスらとプロデュースを手掛ける。

(※)The Chainsmokers & Coldplayの『Something Just Like This』。英語詞を物語化し、小松菜奈主演で映像化した。

「イノベーターとして僕が憧れているのはJ・J。『LOST』のような斬新なストーリーも書くし、音楽も作るし、監督としても『ミッション・インポッシブル』と『スター・トレック』と『スター・ウォーズ』を撮るという信じられないことをやってる。プロデューサーとしても多彩で、得体が知れない。でもそこがすごく面白い。

今、『君の名は。』のハリウッド版の打ち合わせで3カ月に1度J・Jに会うのですが、彼を見てると、『あれやりたい』『これやりたい』って騒ぐというより、目の前の仕事を着実にやっている感じ。他人というか、映画というか、巡ってきた運命に人生を決めてもらっている感じもカッコいいなあと思いますね。

その感じは、『仕事。』で対談した横尾忠則さんも同じで、『事故に遭って、転んだ先に新しい道を見つける』っておっしゃっていました。僕も、マガジンハウスの編集者から『小説を書きませんか』と言われて、『え、俺が?』と思いながら巻き込まれるうちに小説が1つの仕事になった。アニメもそうです。『細田守監督が面白い!』と思って、アニメ作りなんて何も分からないのに『おおかみこどもの雨と雪』(12年)に参加して、それがきっかけで『君の名は。』につながった。それをハリウッドが面白いと思ってくれて、『実写にするなら、一緒にプロデューサーをやろう』とJ・Jが言ってくれたんです。そしてハリウッドでは、僕はまだ新人。新人になれる場所を絶えず探しながら、『自分が固まる前に壊しながら進みたい』という気持ちは強いですね。

最近は『ドラえもん』という歴史的な作品で脚本を書くことに挑戦したり、佐藤雅彦さんと『Duality』という短編映画を共同監督しました。その短編は、自分がディレクションをするなら、こういう映画を作るという提案だったんです。プロデューサーとしてはなかなかできない、極端なことをやったつもりですが、それがカンヌ国際映画祭に受け入れてもらえた。『映画って、まだまだ表現の可能性があるんだな』と思えましたし、『次はこんなものを撮ってみようかな』と、撮るほうでも、今アイデアが出てきています」

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2018年11月号の記事を再構成]

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