コートは男の紋章 粋なコート姿とその着こなしイラストレーター 綿谷 寛 × 服飾史家 中野香織 スペシャル対談

MEN’S EX

2018/11/5

先生 19世紀になってようやく袖付きの上着として、外套であるオーバーコートとその下に着るアンダーコートの2種が生まれます。前者には毛皮などを使った重たいコートと軽く着用できるトップコートがあり、後者はモーニングコートやテールコートが有名。ちなみに英国ではフォーマルな場で着るすべての上着をコートと呼びますね。

画伯 たしかに。我々がテーラードジャケットと認識しているものもスポーツコートと呼んだりするものね。

先生 ジャケットはJack(農民)が語源で、ブルゾンなどのもっとカジュアルな上着を指します。ケープから袖付きのコートに発展していく過程を経て、コート&タイの装いが紳士の象徴になっていったんですね。

画伯 ところで現代のコートにはミリタリー起源のものも多いですよね。こういう軍用コートはいつ頃誕生?

先生 軍制服として登場するのは、これも19世紀。陸軍はシングルブレステッド、海軍は洋上での防寒性を高めるためにダブルのコートを着用しました。

画伯 海軍=ダブルは、風の向きで前の合わせを変えたからって話も聞くね。

先生 軍由来の代表的なコートは威厳を示すためかっちりとしたデザインのものが多く、ロシアの国境警備隊が今も着用するグレートコートが有名ですね。ヘビーなウールを用い丈が長いのが特徴的。そして実は、こういうヒストリカルなメンズコートってほとんど19世紀に生まれているんです。フロックコートの上に着るフロックオーバーコート、ケープが付いたウルスターコート、ジェントルマンが馬を調教する囲い地で着たパドックコート、そして今最もよく着られている社交用のチェスターフィールドコート……。

画伯 こうして歴史を伺うと、コートは男としての象徴や威厳を示すものとして発展してきたことがわかりますね。

先生 男にとって大切なものですから、コート自体が着る人の象徴として扱われる表現も多いんです。「Dust one’s coat(コートの埃をはらう)」は“その人を殴る”の英国的な婉曲表現、「Turn one’s coat(コートをひっくり返す)」は、“変節する”。Wear the king’s coatは“兵士になる”という意味です。

画伯 そういうことを踏まえると、ゆめゆめいい加減に選べませんね。男としての覚悟を持って臨まないと。

先生 先ほどの話じゃないですが、コートはやっぱり男の紋章なんですよ。

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