ZOZOも入りたいプロ野球 ガバナンスが生む磁力ドーム社長 安田秀一氏

2018/10/31

SPORTSデモクラシー

米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務める安田秀一氏の連載コラム。今月はプロスポーツのガバナンスについて、参加しているチームの視点で論じます。日本でガバナンスがうまく機能しているのはプロ野球で、それゆえにリーグの価値が高まっているといいます。ZOZOの前沢友作社長にも「参入したい」と言わしめる磁力とは何でしょうか。

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ドーム社長の安田秀一氏

日本のスポーツ界のガバナンス欠如が問題になっています。アメリカンフットボールやボクシングなど各競技での不祥事の頻発、顕在化がきっかけであり、組織の健全化、不祥事防止の視点から実効性のあるガバナンスの必要性が論じられています。ただ、僕はそこにとどまらず「ガバナンスそのもの」が生み出す本当の価値について、もっと知識をつけてほしいと思っています。

ガバナンスとは、上から統治したり法律で縛ったりすることだけではなく、当事者同士の合意によって組織に適正なルールを導入することでもあります。法律で縛るにせよ、「悪事」を働かせない仕組みは組織の価値を向上させることにもつながります。

当事者同士の合意については、欧米のプロスポーツリーグでとても分かりやすく実践されています。リーグの重要事項はオーナー会議が決定する。リーグに参加する当事者同士でルールを決めて運営するわけで、その結果、リーグやチームの価値は拡大を続け、大きな利益がもたらされています。今回はその仕組みについて考えていきたいと思います。

JリーグやBリーグでは機能せず

米プロバスケットボールのNBAも新たなシーズンが始まり、メンフィス・グリズリーズの渡辺雄太選手(24)が開幕ロースター(登録選手)入りを果たしたばかりか、10月27日の試合に出場しました。僕は大変な偉業だと感じています。それは、NBAのプレーヤーは極めて希少価値の高い、選ばれた存在だからです。

NBAは計30チーム。ロースターは1チーム最大17人しかいません。全体で510人。1試合ごとのアクティブロースター(出場可能選手)は13人と、さらに狭き門となっています。全米には何万人もの高校生プレーヤーがいます。バスケットは世界でサッカーに次いで競技人口が多いスポーツです。その中で世界最高峰と誰もが認めるNBAで活躍する資格を持つプレーヤーは510人しかいない。それがNBAの圧倒的なレベルの高さを生み出しています。

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