イライラ育児、日本を出たら消えた 海外在住母の報告なぜ息苦しい? 日本の「仕事と子育て」両立(3)

2018/11/2

スイスの日常も忙しいけれど、イライラしない

学校への子どもの送り迎えは親かシッターが行う。昼食時には迎えに行って自宅でランチを一緒に食べるスタイル(学校に入っている民間のシッターに依頼し、学校に残って昼食を食べる子もいる)。

日本なら、学校への送り迎えだけでも大変だ。さらに、昼に一度迎えに行って昼食を共にし、また学校に送りに行くというのは大きな負担。それでまた、イライラが増えないのだろうか。

時間的には忙しくてもイライラしなくなった理由を2つ挙げてくれた。

(1)「学校や習い事の課題が驚くほど少ないので、負担にならない。宿題はプリント1~2枚を1週間後に提出するだけ」とのこと。ただ、宿題忘れには非常に厳しいという。「『宿題の期限を守れなかった場合はペナルティーがあります』というプリントに親がサインをして提出します。これは同意したという契約になるので、日本の宿題忘れよりは厳しいですね」

(2)周りと比べない

現地の学校は外国人が4割。駐在で来ている人や、スイス人と結婚した外国人も多く、人種も文化もさまざま。スイス以外で生まれた子も多く、学習の進度も違うので、そもそも比べられることがないそうだ。そのため、わが子のそのままを見るようになり、「うちの子、遅れてる!」というプレッシャーがなくなったという。

◇  ◇  ◇

国際NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは「子どもの体やこころを傷つける罰のない社会を目指して」という調査報告書を17年に発表した。その中で、日本国内2万人のしつけにおける体罰等に関する意識・実態調査結果を見ると、しつけのために何らかの場面で子どもに対し「たたくこと」をすべきであると回答した割合は6割となっている。

筆者は認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークの理事をしている。子ども虐待の理由で最も多い2つが「泣きやまないから」と「しつけのため」。そのために怒鳴ったりたたいたりし、それがエスカレートすれば、子どもの心や体を傷つけてしまう可能性がある。「頻繁ではないから時には怒鳴ったりたたいたりすることも必要」と思っている方が少なくないが、怒鳴る・たたくことは恐怖や不安によって子どもの行動をコントロールすること。コミュニケーションによって子どもの気持ちに向き合い、自立をサポートしていくことが大切だ。

厚生労働省は17年から「愛の鞭ゼロ作戦」というキャンペーンをスタートした。リーフレットを作成し、たたかない・怒鳴らない、体罰によらない子育てを呼び掛けている。筆者も研究班の一員として、このキャンペーンのお手伝いをしている。18年10月には「愛の鞭ゼロ作戦」特設ページがオープンしている。

親自身が「怒鳴らない・たたかないで子育てする」という意識ももちろんだが、杉野さんのスイスからの報告にもあるように、周囲からの温かいまなざしといった子育ての環境も重要だ。

11月は児童虐待防止推進月間。子どもがすくすく育ち、親もイライラせず子育てするために必要なことは何か、考えてみてはどうだろうか。

高祖常子
子育てアドバイザー、育児情報誌miku編集長。資格は保育士、幼稚園教諭2種ほか。リクルートで学校・企業情報誌の編集に携わり、妊娠・出産を機にフリーに。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか。著書は「感情的にならない子育て」(かんき出版)ほか。3児の母。
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