イライラ育児、日本を出たら消えた 海外在住母の報告なぜ息苦しい? 日本の「仕事と子育て」両立(3)

2018/11/2
子連れでスイスへ。感情的に叱ることがなくなっていた
子連れでスイスへ。感情的に叱ることがなくなっていた

仕事と子育ての両立の中で、子どもが言うことを聞かなかったり、さっさと動いてくれない時、イライラしてつい怒鳴ったりたたいたりしてしまうという人がいるかもしれない。イライラは子どもとの関係だけでなく、仕事にも影響を及ぼすこともある。今回は海外に転居した日本人母が感じた子育て環境の違いを通して、「怒鳴る・たたく」育児の背景にあるものを考える。

スイスに暮らし始めて「怒鳴る・たたく」が消えた

ラジオパーソナリティーの杉野朋子さんは、かつて東京に在住していた二児のママ。筆者は、2018年1月に、かつしかFM「早く教えてっ!ママレーザー」という生放送に出演させていただいた。テーマは「ママのイライラ対策!」。感情的にならずに子育てするにはというポイントをお伝えした。それまで杉野さんは、イライラして怒鳴ったり、お子さんをたたいたこともあると言っていた。

その約半年後、パートナーのお仕事の関係でスイスのジュネーブへ。暮らし始めて1カ月がたった頃、杉野さんから「そういえば、私はスイスに来てから子どもを怒鳴ったり、たたいたりしていない」というメッセージが届いた。

怒鳴ってたたいたのは、スイスへ移動中の機内での「静かにしなさい!」が最後だったという。そこで杉野さんに心境の変化について取材してみた。

どうして、怒鳴ったり、たたいたりしなくなったのか。考えてみると以下の3つの理由が挙げられるとのこと。

(1)周りのママやパパが子どもに怒鳴ったり、たたいたりしていない

(2)学校の先生も子どもに対して感情的に怒鳴ったりせず、論理的に説明している

(3)子ども優先の社会で、子連れだと親切にされる

杉野さんは以前から、海外での子育てにとても興味があった。また、米国での駐在経験のあるママ友から(海外では)「怒鳴ったり、たたいたりしたら、親が通報されることもあるから気を付けて」と言われていたこともあり、周りの様子をよく観察していたという。

以下、順番に説明してもらった。

(1)周りのママやパパが子どもに怒鳴ったり、たたいたりしていない

公園に遊びに行った初日に「もう! 帰るよ!」と、何度言っても聞く耳を持たないわが子に遠くから叫ぼうとした時、「あ! 大声はダメだったんだ」と思って、周りを観察したという。現地の人は遊んでいる子どものそばへ行き、顔を見て「帰るよー」と伝えていて、大声を出すことは恥ずかしいという雰囲気だったとのこと。

(2)学校の先生も子どもに対して感情的に怒鳴ったりせず、論理的に説明している

親や大人が、圧力や暴力で子どもに意見を押し付けようという風土がないということ。「自由、平等、友愛(博愛)」のフランス文化の影響をスイスのジュネーブは受けていると感じたという。

そもそも親子でも、大人は子どもの意見を尊重し、「あなたはどう?」と子どもに問いかけている様子もよく見られる。子どもの靴や服を買う場面でも、子どもに「どうする? それね! OK」という感じ。

(3)子ども優先の社会で、子連れだと親切にされる

公共の場で赤ちゃんや子どもが泣いたりすれば、日本と同じように親は必死にあやす。でも、その様子を見て「うるさいな!」と言ったり舌打ちしたりする人は見たことがないという。

子連れで路面電車(バスのような感覚で使える)に乗っていると、大人はもちろん、中学生ぐらいの少年少女も当たり前のように席を譲ってくれる。ドアを開けてくれて「お先にどうぞ」はどこでもされ、本当に驚くばかりだそう。杉野さん親子のように外国人でも、子どもに「Bonjour!」と話し掛けてくれたり、頭をなでてくれるなどかわいがられるそうだ。

次のページ
スイスの日常も忙しいけれど、イライラしない