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顔面移植 米国女性、新しい顔で取り戻す人生

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/11/4

ナショナルジオグラフィック日本版

2017年5月。ドナーからの摘出も含めて31時間に及んだ移植手術が終わり、集中治療室に移されたケイティ。研修医が頭をそっと支えて安定させる。目を保護するため、まぶたは縫い合わされている。顔の移植が終わっても、ケイティはさらに何回かの手術と何カ月ものリハビリが待ち受けていた(PHOTOGRAPH BY LYNN JOHNSON)

18歳のときに顔を失った米国の女性ケイティ・スタブルフィールドが、21歳で顔面移植を受け、新しい顔を得た。ナショナル ジオグラフィックは、移植前から移植後までケイティに密着取材し、日本版2018年11月号「新しい顔で取り戻す人生」で取り上げる。最新の医療技術、家族の愛、背景にある若者の自殺問題など、様々なことを考えさせられる。

◇  ◇  ◇

米国オハイオ州のクリーブランド・クリニックでは、外科医チームが3日前に法的にも医学的にも死亡宣告された31歳の女性の顔を摘出していた。摘出された顔は、新しい顔を待つ21歳の女性ケイティ・スタブルフィールドに移植されることになる。ベテランの形成外科医フランク・パペイが手袋をした手でトレーを持ち上げ、摘出した顔を慎重に運ぶ。

ケイティは米国で顔面移植を受ける最年少の患者となる。このクリニックで実施される顔面移植はこれで3例目、知られている限り、全世界で40例目だ。

■顔を失ったケイティ

ケイティは18歳で顔を失った。ケイティの世界が崩れ始めたのは、彼女が高校生のとき。顔を失う前年、彼女は虫垂炎の手術を受け、合併症を起こして胆のうを摘出した。そして2014年3月25日、ケイティが恋人の携帯電話をのぞくと、そこに別の女の子へのメッセージがあった。問い詰められた恋人は別れを切り出した。

傷つき、逆上したケイティは兄ロバートの狩猟用の銃を持ち出し、自宅のトイレにこもって、自分の顎に銃口を当て、引き金を引いた。鍵のかかったドアを蹴破ってロバートが中に入ると、血だらけの妹が倒れていた。「顔が吹き飛んでいた」。

銃弾は一瞬にして多くのものを奪った。額の一部、鼻、鼻腔、口角をわずかに残して口全体、顎と顔の前面を形作る下顎骨と上顎骨のかなりの部分……。目は残ったが、ゆがんで、ひどい損傷を受けていた。

自殺未遂から5週間余り後にオハイオ州クリーブランドのクリニックに転院したとき、ケイティはこうした状態だった。最初に手術を受けたテネシー州の病院の医師たちは彼女の命を救うことはできたが、腹部から採取した皮膚を移植して、顔面に大きく開いた傷口を塞ごうとする試みはうまくいかなかった。

クリニックで最初にケイティを診た医師のブライアン・ガストマンは、彼女を担架に乗せながら、この患者は持ちこたえられるだろうかと不安になった。ケイティはとても小柄だ。生存できたとしても、必要な手術をすべて行うには、彼女の体から採取できる皮膚組織が足りないかもしれない。「脳が露出した状態で、てんかんの発作や感染症など、あらゆる種類の問題が起きやすくなっていました」

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