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シャトルから青い地球を眺めてステーキ 向井千秋さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

「ウィーンから昨日戻ったところ。あさってはJPL(ジェット推進研究所、米国)で会議だったかな」。産学連携で宇宙滞在技術の高度化を目指す、東京理科大学スペース・コロニー研究センターのトップ。東奔西走の毎日だ。コロニーはライフラインが途絶した災害時の避難先としても期待される。自給自足の食料生産は中核技術の一つだけに「人類が抱える食料問題を解決するカギにもなる」。

空腹ではメスは握れない

4人姉弟の長女。群馬県館林町(現館林市)で生まれ、14歳まで過ごした。「みんな貧乏だったけどね、心は本当に満たされていたなぁ」。その一つが食事風景だ。夕食時は野菜の煮物やいため物、魚の煮付けなどの大皿が並んだ家に、遊び疲れた子供らみんなで上がり込む。「友達や隣のおばさんの家、自分の家も」。分け隔てのないコミュニケーション能力は、みんなで食卓を囲んだこの頃に培ったものだろう。

慶応義塾大学医学部に進み、同大出身で最初の女性心臓外科医に。救急外科医を務めた横浜市の病院は幹線道路沿いで交通事故や急患が多く、いつも仕事は待ったなし。休みもほとんどなかったが、練習の厳しさで知られる慶応スキー部で鍛えた体力と気力で乗り切った。週の初め、ロッカーにビスケットや栄養補助食品など1週間分の食べ物を詰め込んでいたのは、空腹ではメスを握れないという責任感の表れでもある。

心臓外科医として避けて通ることができない「台上死」は、手術室から生きて帰せなかった患者を意味する。「たとえもう手の付けられない状態であっても、やっぱりつらかった」。好き嫌いがほとんどないのに、にぎりずしだけは今もためらうのは、法事・法要後の会食で振る舞われるメニューを思い出すからだ。

訓練の日々支えた母の「保存食」

1983年。48時間ぶっ通しの手術を無事に終え、たまたま手にした新聞の小さな記事が人生を変えた。「宇宙飛行士募集」。85年、500人超の候補者から北海道大学助教授(当時)の毛利衛さん、米航空宇宙局(NASA)研究員(同)の土井隆雄さんとともに、日本人初の宇宙飛行士への切符を手にする。「鬼のような」訓練の日々が米ヒューストンで始まった。

倒れ込むように寮に戻る毎日を支えたのは、母の作り置き料理だった。母は乾物や調味料など日本の食材をリュックに詰め込み度々訪米。ホウレンソウのおひたし、いなり寿司用に甘辛く煮た油揚げなど、日持ちする料理を作っては冷凍してくれた。「ご飯さえ炊けば、おいしいいなり寿司や日本食がいつでも食べられた」。いつ果てるとも知れない訓練に明け暮れる毎日。母の手料理なしでは心折れていたかもしれない。電子レンジで温めるだけの米国流「TVディナー」は今も苦手だ。

94年、98年と2度のミッションで念願のスペースシャトルに搭乗した。無重力状態でのメダカ飼育、人間の血流や心臓機能の変化などの実験に取り組んだ。研究内容とともに注目されたのが宇宙食だ。

たこ焼きで多国籍クルーと食事会

持ち込んだのはたこ焼き、五目炊き込みご飯、菜の花のあえ物など。「好物と言うよりは多国籍クルー(乗組員)とのコミュニケーションが主な目的」。たこ焼きを選んだのには意味があった。シャトルでは、クルーが集まる食事会が定期的に開かれるのだ。

「これ何?」「タコが入っているの」「えっ!?」。世界にはタコを食べる習慣がない国が多い。おそるおそる手を伸ばすクルーの中で、スペイン出身の1人だけは「タコ、大好きだよ」。スペインの定番料理「タコのガリシア風」など、地中海沿岸の国々は欧州では珍しくタコを食用にする。とたんに食材談議に花が咲いた。「食は異文化を知る最高のツール」と痛感した瞬間だった。

宇宙食には思い出がもう一つ。搭乗中はカクテルシュリンプとステーキをよく食べた。いずれも機能優先、水を注ぐだけの簡便さから想像できる味ではある。

ただ、空港のラウンジや立ち食いそば店くらいしか落ち着いて食事ができないほど多忙を極める今、当時を振り返って思う。「シャトルの分厚い窓越しに、青い地球を眺めながら食べた。これがこれまでで一番おいしかった料理かな」

香り立つ十割そば

都内で展開する立ち食いそばチェーン「嵯峨谷」がお気に入りだ。JAXA東京事務所にほど近い神保町店(電話03・5577・6299)、水道橋店によく足を運ぶ。ファストフードだが、「味は老舗の手打ちそば屋にも負けない」。決まって頼むのは、もりそば(320円)とかきあげ(130円)だ。

つなぎを使わない100%そば粉で作る十割そばは、殻付きの玄そばを店内の石臼で挽(ひ)いて製麺する。挽きたて、打ちたてを提供することで十割そば本来の香りと味を引き出す。かき揚げも注文を受けてから揚げる。

「香り立つそばとアツアツのかき揚げがたまらない」と向井さん。ゆっくりと食事をしたいのは山々だが、スケジュール帳は真っ黒で隙間なし。「でもさぁ、やっぱりおいしいものが食べたいじゃない」

最後の晩餐

最後に食べる食事でしょう、なにを食べてもおいしいと思うけどなぁ……。やっぱり卵かけごはんかな。白米をお気に入りの茶わんによそって、まん中に生卵を落とす。しょうゆをちょんと垂らしてかき混ぜてお箸で豪快にかき込む。素朴だけど最高だよ。

(佐々木聖)

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