脚本家になりたい中学生、今からしておくことは?
脚本家、大石静さん
将来は脚本家になりたいと思っています。脚本家になるために、中学生のうちからやっておいた方がいいことは何ですか? また、ふだん仕事で気をつけていることは何でしょうか?(東京都・女性・10代)
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ドラマや映画がお好きなんですね。脚本家になりたいなんて思ってくれて、本当にうれしいです。
さて、今、何をしたらいいかということですが、まずはたくさんドラマを見ることです。
私は脚本家になって30年が過ぎましたが、今でも放送されているあらゆるドラマを見ます。そしてこういうやり方があるのかと発見したり、これはイマイチだけど、何がダメなのか、とあれこれ考えたりします。それが私の勉強法でもあるのです。
あなたもプロをめざすなら、漫然とドラマを見ていてはいけません。好きなドラマは、どこが好きなのか。どのセリフが心に残ったのか。展開のどこが魅力的だったのか。考えてメモしてください。一方、つまらないと思ったドラマのどこがつまらないのか。どこがウソ臭いのか。自分がこのような題材を与えられたら、どんなドラマにするだろうか。それもメモしておいてください。
第2に、道を歩いている時も、人を観察し、想像することです。あの人はどんな仕事の人なのか。どんな奥さんがいるだろうか。あの青年には、恋人がいるだろうか。あの女性は結婚しているか、独身か。想像を膨らませてください。ドラマ作りには圧倒的な想像力が必要です。
殺人を犯したことがなくても、殺人者の気持ちを描かなければならないこともありますし、年は取っていなくても、老人の心を描かなければならないのが脚本家です。常に想像力を鍛えておいてください。
電車の中でも人の話に聞き耳を立てましょう。面白い口調だったり、とんでもないお話だったりを拾って、これもメモしておいてください。
この2つは、あなたの脳の引き出しに積み重なって行き、脚本を書く時に必ず役立ちます。
最後にあなたにとっても、今の私にとっても大切なことは、打たれ強く生きることです。
ドラマは大勢で作るので、監督やプロデューサーや役者と意見が食い違ったり、苦しかったりすることは多いです。その時、辛くて辞めてしまう新人が多いのですが、絶対に逃げないで踏ん張る人間になることです。
いかなる人生も、打たれ強くなければ成功しません。才能より手前にその力が必要なのです。ステキな脚本家になってください。期待しています。
[NIKKEIプラス1 2018年10月27日付]
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