まず販売の現場の女性から

そのストーリーをいかに伝播させていくか。山口氏は、まず、リンクルショットを販売する現場の女性たちの「ハートに火をつける」作戦を立てた。末延氏をはじめとする研究開発チームの言葉を、販売の最前線にいるビューティーディレクターたちに「生で聞いてもらう」プレゼンテーションを企画。発売直前のわずか1カ月の間に、北海道から沖縄まで、全国の営業拠点144カ所を回るというすさまじいスケジュールで、研修会を開いた。

同時に2016年12月から、新聞、雑誌、テレビ、ネットに一斉に広告を出す。シワが気になる世の女性たちの「ハートに火をつける」ためだ。広告ポスターは、オレンジ色のドレープの入った布の中央にリンクルショットを配置したシンプルなデザイン。化粧品のCMの定番である女優の起用はあえてしなかった。当時のメインの広告コピーは「日本で唯一、シワを改善する薬用化粧品」。「効能をはっきりうたえる医薬部外品だからこそ、曖昧な表現を一切排した」

デザインコンセプトは「契約」

斬新なパッケージにも、15年間の開発ストーリーが込められている。デザインコンセプトは「契約」。「あなたのシワを改善します」という強いメッセージを込めた筆記体のロゴ。

末延氏が「化粧品としてはあり得ない色で、正直、最初は違和感があった」という本体の濃紺は、「前人未倒の開発に費やした15年間は、星ひとつ見えない暗い宇宙を旅した時間のようだ」というデザイナーのインスピレーションから。パッケージでも「前例のないもの」を作り、強い印象を与えた。

発売後の好調な売れ行きは前述のとおり。さらに、リンクルショットが、ポーラの他の化粧品の購入の呼び水となる予想外の波及効果もあった。ポーラショップでは、リンクルショットを買った人の約7割がその後にB.Aシリーズなど、ポーラの化粧品を購入していった。山口さんのプロモーションの狙いが当たり、リンクルショットによってポーラブランド全体のプレゼンスが高まり、店頭でのカウンセリングも功を奏して異例のブランドスイッチが起きた。それが、リンクルショット単体の売り上げ以上に業績を押し上げた。ひとつの革新的商品がポーラを大きく変えた。

(日経BP社「日経おとなのOFF」編集委員 安原ゆかり)

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