振り返ってみると、青学の中等部に進学してからも、国語の授業で「いいと思った文章を抜き書きしなさい」という課題がありました。ご担当だった布施英俊先生はやはりメッセージを返してくださって、反応が楽しみでした。いま文章を書くことや読書が好きなのも、こういう経験があったからかもしれないですね。

もちづき・みさと 1969年東京生まれ。東京芸大大学院修了、パリ国立高等音楽院修了。芸術選奨文部科学大臣新人賞、ユネスコ国際作曲家会議グランプリなど国内外で受賞多数。近年は脳科学に触発された作曲などで現代音楽をリードする

今はツイッターなど発信するツールがたくさんありますけれど、誰がみているかわからないのでどうしても人目を考えますよね。自分の思っていることをオープンに言ったらすぐ炎上しかねませんし。その点、こうしたノートは先生と自分だけの、ある意味、閉ざされたやり取りだったので、「そんなのちょっと恥ずかしいよね」とか「ばかみたい」とか意識せず、自由に表現できました。作曲も幼いころから楽器などを使って臆せず自由に表現していましたが、こういう機会を子供のころから持てたのは良かったと思います。作曲の理論や技法、文章で言うと文法や構成は後からでも学べますが、感じたことをそのまま表現するというのは、大きくなってからは意外にむずかしい気がするので、本当にいい教育を受けたと思います。

毎年、家を離れて宿泊する行事があった。

もうお一人、初等部でとてもユニークだったのが、部長(校長)でいらした伊藤朗先生です。部長室を開放されていて、よく遊びに行きました。みんなの話を聞いてはお菓子をくださる、おもしろおかしいサンタさんのような感じだったのです。独創的で、6年生の生徒が10日間ぐらい船に乗って生活する「洋上小学校」など、様々な活動を始めたのも伊藤先生だったそうです。洋上小学校は竹芝桟橋で貸し切りの船に乗船して、種子島や対馬を回りました。上陸するのは3回ぐらいです。みんなひどい船酔いをするんですけど、例外的に元気な子が他の子を助けたり、こうすると楽だよとアドバイスしたり。ほかの子がもどしてしまったものを素手で受け止めた子がいたんですね。手で受けてもあまり意味はないかもしれないけれど、こういうことを自然にできるのはすごいなって思いました。それまで知らなかった級友のやさしさやつよさに気づかされた機会でした。

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