厳しくなる投資用不動産の銀行融資 価格は下がるか不動産コンサルタント 田中歩

しかし、だからといって投資用不動産の価格は大きく値下がりするのでしょうか? 筆者は必ずしもそうではないと考えています。オーバーローンなどを利用して無理に購入していた人や、採算が合わなくても買わされてしまう人がいなくなるだけで、ある意味、市場が適正化されるのではないかとみています。また、立地や敷地の形状、規模などにもよりますが、収益価格と積算価格のバランスがとれた不動産も多くあり、こうした不動産は値下がりすることはないと考えています。

留意すべきはリスクプレミアム

このコラムの「投資用中古マンションの価格 上昇の要素は見当たらず」で説明したとおり、投資用不動産の価格は賃料水準、金利(10年国債利回り)、リスクプレミアム(不動産投資のリスクをとるため、リスクのない10年国債利回りに上乗せしたいと投資家が要求する利回り)で決まると考えられ、算式は次の通りとなります。

投資用不動産の価格=年間賃料÷(金利+リスクプレミアム)
金利+リスクプレミアム=表面利回り

この算式からすれば、年間賃料の下落、金利上昇、リスクプレミアムの上昇があれば、投資用不動産の価格は下落することになります。現在、賃料は微増しているものの勢いはありません。未曽有の超低金利なので金利がいつ上がるかに留意すべきですが、日銀が一気に金利を上昇させたり、市場で国債の利回りが急騰したりすることも今のところ考えにくいでしょう。

今、留意すべきはリスクプレミアムだと筆者は考えています。

中長期的には世界の経済動向を見極める

前述のコラムでリスクプレミアムは日経平均と反対の動きをしていると説明していますが、このことは景気が良いときは不動産投資をしやすい環境と判断され、景気が悪くなると不動産投資を控えようという気分になりやすいことを意味します。

たとえば、米中の貿易戦争による経済の停滞、特に中国経済の停滞のほか、欧州の金融機関の経営問題、新興国通貨の暴落による世界経済への影響など、国内景気に影響しそうな事象が世界中で潜在化しています。中期的にはこれらの動向を見極めるほうが大切なのではないかと考えています。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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