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マラソンに厚底靴ブーム 新記録相次ぎ市民ランナーも ナイキのヴェイパーフライ、反発力あって軽量

2018/11/2 日本経済新聞 朝刊

シカゴマラソンでは大迫選手(中央)を含む1~5位までがナイキの厚底シューズを履いていた(C)NIKE

10月7日のシカゴマラソンで3位に入り、2時間5分50秒の日本新記録を樹立した大迫傑選手(27)。快走を足元から支えたシューズが、ナイキの「ズーム ヴェイパーフライ4% フライニット」だ。このところ世界の長距離界を席巻している「厚底」シューズの最新モデルにあたる。

ナイキの「ズーム ヴェイパーフライ4% フライニット」(C)NIKE
大迫選手は「スピード勝負になったとき、特にありがたみを感じる」という

「沈むけど、その分きちんと反発があって非常にいい靴」と、大迫選手が絶大な信頼を寄せる秘密は靴底にある。

カーボンプレートをクッション性のある素材で挟む特殊な構造で、最長約4センチも厚みがありながら、重さは男性用28センチのモデルで198グラム。「反発性のあるカーボンで推進力を保ちつつ、それに負けないクッション性と軽さを保てる」(ナイキジャパンの広報担当者)ことが大きな特徴だ。

エリウド・キプチョゲ選手(ケニア)らトップランナーの要望を踏まえ、数年の製作期間を経て試作品が誕生したのは2016年。ナイキ・オレゴンプロジェクトの一員として同社の新製品を試し、「感触」という名の情報を製作現場にフィードバックする立場にある大迫も自然と履き慣れることになった。

それまで薄底に親しんでいた大迫選手は当初、その構造に驚いたというが、「もともと、こうでなければ、というこだわりはなく、走っているうちに効果を発揮できるようになった」。「フォアフット」と呼ばれるつま先を地面に先につける走法も、このシューズを履いたトレーニングで生まれたものだ。

過去3度のマラソンに「ヴェイパーフライ」シリーズを履いて挑み、走るたびにタイムを大きく更新した。もともとは3千メートルと5千メートルで日本記録を持つトラック出身ランナー。自分の領域であるスピード勝負になったとき、特にこのシューズのありがたみを感じるという。「薄い靴だと疲労が残ることがあるが、厚底はそこが軽減される。短い距離から(マラソンに)来た選手は蹴る要素が大きいから武器になる」

既にその恩恵を受けた選手は数知れない。開発のきっかけとなったキプチョゲ選手は試作品で走った16年リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得。さらに今年9月のベルリンマラソンで2時間1分39秒という驚異的な世界記録を達成した。大迫選手が3位に入ったシカゴマラソンでは、優勝したモハメド・ファラー選手(英国)から5位の選手まで、全員がこのシューズを着用していた。

国内でも2月の東京マラソンを2時間6分11秒で走った設楽悠太選手が1つ前のモデルを履き、今年の箱根駅伝で往路優勝した東洋大も採用している。大迫選手や設楽選手が市販品を履いていることもあって、国内の市民ランナーの間でもユーザーが急増中。厚底ブームはしばらく続きそうだ。

(鱸正人)

[日本経済新聞朝刊2018年10月25日付を再構成]

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