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親の認知症に備える 気持ちに配慮しつつ資産情報共有 マネー危機管理術(上)

日経マネー

2018/11/16

余計な懸念を取り除き、家族関係を守りながら必要な備えを進めることが大切だ。

口座数が多ければ絞り込むことを勧めたい。管理が楽になり、将来の相続手続きの手間も減る。信用取引などリスクの高い投資をしている場合はいつまで継続したいかなど意向を聞いておく。「投資が生きがいの人も多い。余裕資金なら続けさせたい」(塚原さん)。これからの人生プラン、体調などをゆっくり話す時間をマメに持つことで、資産運用についての考えが聞けたり、認知症の兆候にいち早く気付き対処することもできる。

■証券口座と戸籍謄本の用意

親が証券会社に口座を持ち、その資産を将来引き継ぐ見込みのある人は、同じ会社に口座開設しておくといい。相続が口座の名義変更という方法になるためだ。葬儀と前後し口座を新設するのは負担になる。同様に親の戸籍謄本を用意しておくといい。

相続が発生すると「被相続人の出生から死亡までの全期間の連続した戸籍」が必要になる。「婚姻による除籍、本籍地を移す転籍などがあればそれだけ戸籍の数が増える。全ての戸籍を集めてくるだけで数カ月要する人も多い」(塚原さん)。この作業を先行して進めておくことで、事前に法定相続人も明確にできる。

■民事信託で備える

親が認知症であることを金融機関が把握すると口座の資産を本人も家族も動かせなくなる。この状態は何年続くか分からない。その間、親の生活費や介護費を子が担ったり、投資資産の塩漬けを余儀なくされる場合もある。

成年後見人制度は本人に代わり親族、弁護士などが資産管理などを行うもの。後見人は家庭裁判所が選任する。「親族トラブルの増加に伴い家裁も慎重になり、親族の選任は30%未満。親が長男を希望しても第三者になるという例も多い」とランドマーク税理士法人・代表税理士の清田幸弘さんは指摘する。相続対策で不動産を売る、娘の事業に資産を役立てるなどは、親の希望でも家裁の許可は下りにくい。

代わって親の意志が反映されやすい資産管理と継承対策の民事信託が注目されている。「信頼する家族を受託者に選べ、相続対策や余裕資金の積極的な運用もできる」(清田さん)。最近では、民事信託を利用して、子が親の不動産を売り親の選んだ老人ホームの入居資金を用意する例が多いという。「手続きは、親に判断能力のあるうちする。金融機関の対応にバラ付きがあるのは税制が追いついていないため。現在はまず、経験のある税理士に相談するのが最もスムーズだ」(清田さん)。

(日経マネー 太田留奈)

[日経マネー2018年10月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年 12月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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