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2020年から見える未来

五輪へホテル・クルーズ港 東京湾岸に再び開発の波

2018/11/13 日本経済新聞 朝刊

東京都や民間が臨海部にこれだけ力を入れるのは1980~90年代に浮上した「臨海副都心構想」以来だ。商業施設が相次ぎ開業、フジテレビが本社を台場に移したが、オフィスの集積は進まなかった。95年に当時の青島幸男知事が世界都市博覧会を中止したこともあり失速した。

20年7月には新客船埠頭「東京国際クルーズターミナル」が開業する(写真はクイーン・エリザベス)

半面、進んだのが住宅の集積だ。勝どきや豊洲では00年代から高層マンション開発が相次ぎ「湾岸タワーマンション」のブランドが確立。「民間主導で開発が進んだ」(都市政策に詳しい明治大学の市川宏雄名誉教授)

今回、臨海部に訪れた2度目の開発の波。20年7月には新客船埠頭「東京国際クルーズターミナル」が開業する。青海はカジノを含む統合型リゾート(IR)の候補地にも名前が挙がる。

臨海部にはまだ「フロンティア」がある。青海より南側の中央防波堤埋め立て地だ。この内側と外側に挟まれた水路には五輪のボート・カヌー会場「海の森水上競技場」ができる。

12年のロンドン五輪では競技会場や選手村の建設を通じ、衰退した工業地帯・東部ロンドンが再生した。都は臨海部の将来を重ねる。副都心構想の頓挫から約20年。市川名誉教授は「スポーツやエンターテインメント、最新技術を集めた未来都市にすべきだ」と説く。

■ファストリ新本部は5千坪ワンフロア

都心に近いという物流面の利便性を享受しながら、広大な敷地を活用できる臨海部。その特性を生かし、新たなビジネスモデルの構築に動き出す企業もある。

ファーストリテイリングの有明本部(東京都江東区)

ファーストリテイリングは14年、江東区有明で大型物流倉庫を着工した。完成後の17年に倉庫の最上階(6階)に広がる約5000坪のワンフロアに、ユニクロ事業の全部門を六本木から移管した。

約1000人が働くこの「有明本部」はワンフロアにオフィスをまとめることで、商品企画から生産、販売、物流まで全部門が垣根を越えてコミュニケーションできるようにするのが狙いだ。オフィスと倉庫の一体化を図り、幹線道路で顧客に商品を送り出すという臨海部オフィスの未来像も映し出す。社員が通勤しやすいよう、豊洲や新橋など4カ所から専用の通勤バスも走らせる。

7月下旬、臨海部の海中に巨大な鉄の箱が沈められた。大きさは縦28メートル、横134メートルで高さ8メートルとサッカー場の半分。「沈埋函(ちんまいかん)」と呼ばれるこの構造物を7個つながるように海中に沈め、有明地区と中央防波堤をつなぐ全長1キロの海中トンネルにする。

造船業の歴史がある三井E&Sホールディングスと三菱重工業が構造物建設で強みを発揮。東京五輪・パラリンピックの重要な輸送経路となる。

海中で設置中の沈埋函。長さ134メートルにも及ぶ(18年7月)

「東京五輪を機に有明は変貌する。まだまだ開発余地がある」。10月1日、「ダイワロイネットホテル東京有明」を開業したダイワロイヤルの上田理恵・首都圏統括支配人はこう強調する。全国48カ所あるダイワロイネットホテルで有明は368室と最大規模。客室稼働率で90%、年間18万人の来客を目指す。

ボルダリングの壁などを備えたトレーニング施設を併設する。ボルダリングは自転車BMXなどと並び、東京五輪の新種目となる都市型スポーツだ。上田・統括支配人は「有明アリーナなどで多種多様なスポーツが開かれれば、今以上にお客様が来る」と言う。

臨海部には大きな商機が眠る。「当社としても過去最大規模のプロジェクト」と意気込むのは、有明で800室のホテルを開発している住友不動産。経営戦略上、臨海部開発を重要視する。選手村の開発に携わる、野村不動産ホールディングスの宮嶋誠一副社長は「新築分譲マンション価格が高止まりしている中、(臨海部など)利便性の高い立地の物件は需要が堅調だ」と分析する。

ただ、臨海部の開発地域には企業による選別の波も押し寄せてきているようだ。大和ハウス工業で物流施設開発を担当するDプロジェクト推進室の大島武司室長は「今後も開発用地を確保するのは難しい状況が続くだろう」と話す。

[日本経済新聞朝刊2018年10月23・24日付]

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